「精査」の意味とは? 類語やビジネスシーンでの使い方についても解説!
仕事のメールや資料、会話などのやりとりで「精査」という言葉を目にしたり、耳にしたりすることはありませんか。しかし、「調査」や「検査」など似ている言葉もあり、使い分けに悩むこともあるかもしれません。
本記事は、精査の意味や業界ごとでの使い方などを解説していきます。
目次
精査の意味
まず、「精査」の言葉の意味から見ていきましょう。
『広辞苑(第7版)』によると、「精査」は「くわしく調査すること」と記されています。『デジタル大辞泉』では、「感染の原因を精査する」という例文が紹介されています。調査など、ほかの似たような言葉と比べて、より「入念に」「精密に」「厳密に」という意味合いが強い言葉といえます。
精査の業界ごとの使い方
意味は同一ですが、精査の使い方は業界ごとに特徴があります。
ここでは、それぞれの業界での使い方の違いについてみていきましょう。
ビジネスにおける精査の使い方
ビジネスでは、よく利用されている表現の一つですが、「自分が調べる」場合と「相手に依頼する」場合があります。端的に言うと、自分が精査する時は「精査いたします」、相手に精査を依頼する時は「ご精査をお願いいたします」と覚えておくと良いでしょう。
自分が精査する場合
自分が書類や資料などを「精査」するケースでは、「精査の上、後日、あらためて回答いたします」「現在、精査しておりますので、しばらくお待ちください」「精査の結果、採用させていただきます」などと使います。
相手に依頼する場合
一方、相手に「精査」を依頼するケースでは、企画書や報告書などについて、「ご精査のほどよろしくお願いいたします」「ご精査をお願いいたします」などと表現します。この場合は、「お願いする」という使い方になり、「ご精査」と敬語表現にすると丁寧になります。
医療現場における精査の使い方
医療の分野では、「専門的にさらなる詳しい検査をする」というニュアンスになります。例えば、健康診断などで「要精査」という診断を目にすることがあるかもしません。病気の疑いが見つかった場合、より細かく状態を調べる「精密検査」の必要がある状態を指します。
参考までに、特定非営利活動法人日本肺癌学会は、「健康診断や検診で、『肺がんが否定できない』『肺がんを疑う』という判定だった、あるいは『昨年の検査と比較して所見に変化があった』などX線などの画像所見で胸に異常な影が見つかると、『要精査』と判断されます」と伝えています。
金融業界における精査の使い方
ビジネスや医療現場のほか、金融業界でも広く利用されています。例えば、銀行などでは「現金精査」という言葉があります。現金を集計し、データなどと照合して金額に相違がないかを確認する業務です。
公認会計士の現場では、会社の会計に不正がないかどうかを確認する場合に「精査」が使われます。日本公認会計士協会によると、「全ての取引や項目について監査手続を実施すること」としています。会計処理を余すところなく調べる綿密な作業といえます。参考までに、「監査」いう言葉は、「監督して検査すること」を表し、「不正会計を行わないように、公認会計士が会社を監査する」というように使われます。また、企業や法人には「監査役」という職もあります。
「精査」の類義語
精査と似たような言葉がたくさんあります。特に、「調べる」や「明らかにする」という意味を持つ「査」が含まれていると、使い方に迷うことがあります。それぞれの言葉の意味を整理しましょう。
調査
調査とは、「ある事項を明確にするためにしらべること(『広辞苑第7版』)」とあります。例を挙げると、世論調査、市場調査、国勢調査などがあり、よく耳にする言葉かもしれません。そのほかにも、現地調査、事故調査などがあり、広範囲にわたる対象について調べる時に使われます。この場合、実態や動向を正確に把握することが主にあり、精査のように対象が明確で「より詳しく調べる」というニュアンスと違うことが分かります。
検査
検査とは、「基準に照らして適不適や異状・不正の有無などをしらべること(『広辞苑第7版』)」とあります。例えば、精密検査、血液検査、身体検査などは、日常生活でなじみのある言葉ですね。製造業などの現場では「(製品の)品質を検査する」、空港やイベント会場では「手荷物検査」、そのほかにも「所持品検査」といえば、イメージがわくでしょう。
査収
査収とは、「よくしらべた上で受け取ること(『広辞苑第7版』)」と説明されています。納品書などをはじめ、書類や品物、金銭など、幅広く使われ、丁寧な表現方法です。「商品をお送りしました。ご査証ください」とあれば、「よく調べて受け取ってください」という意味を含んでいます。受け取った場合は「査収(しました)」とは言わず、「受領いたしました」「受け取りました」という返事が一般的です。また、「依頼」する時に使う言葉であり、自分が受け取る時に調べる場合は、「精査」や「確認」などが良いでしょう。
検討
検討とは、「詳しく調べ、当否を考えること(『広辞苑第7版』)」と表記されています。ビジネスの場面では、「ご検討ください」などと使われます。実用日本語表現辞典によると、検討の由来は、「検」には「調べる」、「討」には「求める」という意味があり、「調べる」「深める」という二つの意味の重なったものが「検討」。ただ「考える」のではなく、より深くじっくりと考えることを表すこととあり、今後の動向の可能性をじっくり判断するという意味で用いることが多い言葉です。
そのほかにも類語や似た言葉はたくさん
上記以外にも、審査(詳しく調べて適否や優劣などを決めること)、検証(実際に調べて証明すること)、吟味(物事を詳しく調べて選ぶこと)、確認(はっきりたしかめること)、探査(さぐりしらべること)など、「精査」に似た言葉はたくさんあります。
精査の対義語は
精査の言葉の意味や使い方を知ると同時に、精査の対義語も知っておくと、言葉の幅が広がり、役立つ機会も増えます。
略儀
精査の対義語の一つは「略儀」です。略式と同様、正式の手続きを一部省略し、簡単にしたやり方という意味です。文面で使われる言葉で、「略儀ではございますが、メールにてお礼を申し上げます」などと表現します。「簡単ではございますが」「まずは」などと言い換えることもできます。
通覧
通覧もビジネスで見かける言葉の一つです。「全体にわたって一通り目を通すこと」という意味を持ちます。精査を終えた書類を最終確認する場合にも「通覧する」と表現することがあります。
紛らわしい言葉を意識しながら正しい使い方を
精査という言葉は、さまざまな場面で使われていますが、業界によって意味や使い方が異なります。また、「査」を含んだ言葉もいろいろあるため、その違いを認識して意識することが大切です。
【参 考】
広辞苑第7版
デジタル大辞泉
実用日本語表現辞典
特定非営利活動法人日本肺癌学会ホームページ
日本公認会計士協会ホームページ