抽象的とは?意味・対義語・例文をわかりやすく解説!
仕事や学校、テレビにSNS、友人との何気ない会話まで。私たちは日々言葉のなかで生きています。しかしそんな言葉にも、実はふわりとした意味しか分かっていないものがあるのではないでしょうか。もしかしたら、知らぬうちに使い方が間違っていて、相手に何か違和感を与えているかも…、つい不安になってしまいます。
本記事ではそんな単語の一つとして「抽象的」を取り上げます。意味から対義語・類語まで、例文を挙げながら分かりやすく解説していきたいと思います。
目次
抽象的とは?
抽象的の意味を簡単に解説
「抽象的」には以下の2つの意味があります。まず一つ目は「いくつかの物事から共通なものを抜き出して、それを一般化して考えること」です。
例えば、スーパーの鮮魚コーナーに並ぶ、アジやブリ、サンマなどを大きく「魚」とまとめてしまうとき、これは抽象的に考えているといえます。魚種でそれぞれを分けるのではなく、魚類という共通点を抜き出すことで「魚」と捉え、考えているのです。
また、さらに捉える範囲を広げると、魚を「生物」という分類でまとめてしまうこともできます。このようにアジ→魚→生物と捉える範囲を広げていくことを「抽象度を上げる」といいます。
二つ目は「頭の中だけで考えていて、具体性がないこと」です。主に主張や様子が具体的でなく、はっきりしないときに使用されます。こちらの方が日常の中ではなじみ深いかもしれません。例を挙げてみましょう。
あなたが休日に出かけたいところを聞かれたとき、明確な希望があれば「海沿いをドライブしたい」「気になっていたカフェに行きたい」などと答えることができます。しかし、特にないけれど出かけたい場合「楽しいところ」「リラックスできるところ」といったような、ふわりとした答えになってしまうのではないでしょうか。このふわりとした答えは「抽象的な答え」と表現することができます。
英語での「抽象的」とその例文
「抽象的・抽象的な」は英語で「abstract」と表します。
・His opinion is abstract and hard to understand .(彼の意見は抽象的で理解しにくい)
・His work is characterized by an abstract expression of the beauty of nature.
(彼の作品は、自然の美しさを抽象的に表現しているのが特徴です)
抽象的を使った例文
「抽象的」の会社や学校、日常生活の中での使用例を紹介します。意味や具体的な使い方を例文に沿って自分の中に落とし込んでみましょう。
会社・学校での例
・事業を拡大するうえで、物事を広い視野で抽象的に捉えることが大切になってくる。
・挙がる意見は抽象的なものばかりで、会議は平行線だ。
・今度の生徒会長の公約は抽象的でどこか頼りない印象を受ける。
日常生活での例
・抽象的な視点から捉えてみると、どんなにすごい人でも僕らと同じ人間だ。
・ご飯を誘ってきた友人の店の希望が、抽象的なものでこちらが困る。
・動画サイトで「モテる秘訣」を見てみたけど、抽象的過ぎて全然参考にならなかった。
・個展会場には抽象的な絵画がずらりと並んでいた。
例文を見てみるとわかる通り、「抽象的」は肯定的な意味と批判的な意味のどちらでも使用されることがあります。「今度の生徒会長は~」の例文のように、具体性がなく頼りないと批判的な意味を持つこともあれば、「個展会場には~」のように肯定的な意味で使用されることもあります。使用するシチュエーションによっては注意が必要です。
抽象的の対義語と例文
抽象的には対義語がもちろん存在します。反対の意味を知ることで、より抽象的という言葉に対してのイメージが湧きやすくなるのではないでしょうか。例文を挙げながら見ていきます。
具体的
具体的は「物事がはっきりとした形態や内容を備えているさま、観念的でなく個々の事物に即しているさま」という意味を持ちます。例えば「猫」という言葉を具体的にすると「尻尾の長い三毛猫」や「目が青いシャム猫」と言うことができます。物事を具体的に言い換えると、より分かりやすく、伝わりやすい内容になります。
・オリンピック出場へ向けて具体的な目標を掲げる。
・具体的なことに関しては、また今度話すよ。
・意見を具体的に伝えることは、人とコミュニケーションを取る上で大切なことだ。
具象的
具象的は「はっきりとした姿や形を持っているさま」という意味を持ちます。絵画や造形作品といった美術分野を表す文章で使用されることが多いです。
・この絵画は具象的に世界を表している。
・風景をモチーフに具象的な絵画を描く。
抽象的の類語と例文
抽象的には「いくつかの物事から共通なものを抜き出して、それを一般化して考えること」と「頭の中だけで考えていて、具体性がないこと」の2つの意味がありました。似た意味を持つ類語を知ることで、言葉のレパートリーや表現の幅が広がるかもしれません。例文と共に挙げていきたいと思います。
曖昧な
「物事がはっきりとしない様子、不明瞭な様子」という意味を持ちます。抽象的を「具体性がないこと」という意味で使用するときの類語になります。意図的に物事をはっきりさせないでおく場合にも使用され、信ぴょう性がない様子を表すこともあります。
・分からなかったことを曖昧なままにしておくのは愚の骨頂だ。
・昨夜、お酒を飲みすぎて記憶が曖昧な部分がある。
・相手のどこか曖昧な返答に不安がよぎる。
・曖昧な説明で追及から逃れようとしているのは見苦しい。
漠然
「ぼんやりとしていて、とらえどころがない・はっきりとしないさま」という意味を持ちます。抽象的を「具体性がないこと」という意味で使用するときの類語になります。
・自分の将来のビジョンが漠然としか浮かばない。
・漠然と「何かをしたい」とは思っているけれど、何をしたらいいかわからない。
・質問が漠然としすぎていて、はっきりと答えることができない。
概念的
「個々の特殊性を問題にすることなく、物事を大まかにとらえるさま」という意味を持ちます。抽象的を「共通なものを抜き出して、一般化して考えること」という意味で使用するときの類語になります。物の見方が大雑把なこと、具体性のない考え方に対していくらか非難する意味を込めて使用することがあります。
・概念的で分かりづらいため、具体的に説明をお願いします。
・概念的な思考を持つことも時には必要だ。
まとめ
本記事では「抽象的」の意味や対義語・類語について、例文を交えながら説明してきました。上記に示したポイントを把握しながら、日常や学校での会話、ビジネスシーンでぜひ使用してみてください。状況によって対義語や類語も使い分けていくことができると、なおいいかもしれませんね。
参考文献
『明鏡国語辞典 第二版』大修館書店(2010)
『ベネッセ表現読解国語辞典』ベネッセコーポレーション(2003)
『ジーニアス和英辞典 第3版』大修館書店(2011)