立ち向かうにせよ、逃げるにせよ、決断する勇気を。(後編)|足立紳監督特別インタビュー【『雑魚どもよ、大志を抱け!』公開記念】
2023年3月24日より上映が始まる岐阜県飛騨市オールロケ映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』。
岐阜新聞では足立紳(あだちしん)監督に映画に対する思いを直撃しました!(後編)
前編はコチラ↓
立ち向かうにせよ、逃げるにせよ、決断する勇気を。(前編)|足立紳監督特別インタビュー【『雑魚どもよ、大志を抱け!』公開記念】
【足立紳監督PROFILE】
1972年鳥取県生まれ。相米慎二監督に師事。脚本を手掛けた『百円の恋』が2014年映画化。他脚本作品として『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(17)、『こどもしょくどう』(19)、『嘘八百シリーズ』、『アンダードッグ 前編・後編』(20)などで、ドラマ「拾われた男」がBSプレミアムとディズニープラスで現在配信中。2023年10月からのNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の脚本も控える。また監督作は『14の夜』(16)、『喜劇 愛妻物語』(20)など。
大人になっても難しい「決断する勇気」を伝えたい
少年たちの関係性が見事でしたが、それは彼らが撮影の間につくっていったという感じだったのですか。
ほんと、そうですね。関係性みたいなものは一番大事だと思っていたので、撮影しながらももちろんそうですけど、クランクインの前に何度も集まってもらったのは、ひとえにそこの雰囲気づくりをするため。そのための2カ月間みたいなものですよね。それは、ぼくが「雰囲気だせ!」と言って出るものじゃないと思うので、もう放置プレイに近い感じですね。
撮影のときは合宿みたいな感じで、彼らは楽しそうにしてました。彼らが泊まったところには、サウナや大浴場があって、毎晩みんなで入ったりしたみたいですよ。
本作の中で、監督がいちばん印象に残っているシーンはどこですか。
全部、印象に残っていますけどね。ただ、難しさというところでは、彼らがヤンキー中学生の政ちゃんと対決するシーンですね。7人全員が出てくるので、ごちゃごちゃした感じを出したいなぁと思ってて。でも、作り物っぽくならないようにするのは大変でした。
あとは、最後の瞬と隆造の鉄道のシーンですよね。ふたりのお芝居に関してはほとんど心配はしてなかったけど、どう撮るか、撮影自体がものすごく大変でした。あれは観光用の列車で、運転体験ができるということだったんですけど、さすがに撮影に使うのは危険だからダメだと言われると思っていたら、「大丈夫です」って。しかも、ほんとうに列車を動かして追いかけたり、バックで戻ったりと何でもやらせていただきました。スタッフは大変だったけど、ひたすら彼らと一緒に撮っているのが楽しくてしょうがなかったですね。
あらためて、監督がこの作品に込めたメッセージ、伝えたいことは何ですか。
伝えたいことは、瞬のような子どもが何をするにせよ、立ち向かうにせよ、逃げるにせよ、決断しなきゃいけないのだけど、その決断というのがどうにも難しい。大人になってもなかなか決断するのは難しいけど、その一歩を決める勇気、後ろ向きだろうが前向きだろうがどっかで勝負をかけた方がいいということですね。
あとは、「お前が好きなんだ」というような気持ちですかね。面と向かってはなかなか言えないから、最後のシーンはただただ、ふたりが名前を呼び合っているだけなんですけど、そんな気持ちが伝わればいいなと思います。
昭和の町並みが残る飛驒市でオールロケを敢行。
いろいろ各地をロケーションされて、飛騨市をロケ地に選んだ決め手となったのは何だったのですか。
プロデューサーが各地を回ってビデオに撮ってきてくれたんですけど、まず、僕が生まれ育った町にすごく雰囲気が似てるなと思ったんですよね。原作は、もろに鳥取の倉吉という田舎町が舞台で、鳥取で撮るという構想もあって、10年くらい前には相談したこともあったんですけど上手くいかなくて。
それで、「飛驒市に行ってみたい」と連れて行ってもらったら、飛騨市は飛騨市の特長はあるけれど、ほんとにそっくりというか、空気感が何か似ていて。なおかつ、どこに行ってもほぼその年代の状態が残ってるというのが珍しいなと思いました。
それから、当時は物語にトンネルや線路が出てきてなかったんですけど、こういうところもあるんだったら、『スタンド・バイ・ミー』じゃないですけど、ここで何かができるんじゃないかと。あと、少年たちが「これを成し遂げたら強くなれる」みたいな場所がほしいなとずっと思ってて、トンネルはそれにハマるんじゃないかなと思ったんで、行ってすぐに「もし、ここで撮れるのならやりたいです」と言いました。
飛騨市での思い出や、心に残るエピソードなどがありましたら教えてください。
撮影自体はすべてが思い出です。撮影以外のことで言うと、神岡町と古川町のちょうど間くらいある、ご家族でやっていらっしゃる宿に泊まっていたんですけど、その宿の方々にほんとに良くしていただきました。いつも撮影から戻ってくると、あったかいものが用意されていて、それが楽しみで。だんだんそこのご家族とも仲良くなって、夜中にしゃべったりしたんですけど、ああいう感じで撮影したことははじめてでした。今まで地方で撮影しても、「ホテルに戻ってくる」みたいな感じだったんですけど、「家に戻ってくる」みたいな感じで、そういう意味でも気持ち的にものすごく撮影がしやすかったし、楽しかったです。
ただ、飛驒市へ行くには、うねうねした山道を超えなくてはいけなくて、ロケハンなどで何回も往復しましたけど、その道のりは辛かったです。。俺と何人か車が苦手なスタッフがいて、ほんとにそこを通るのだけが憂鬱で、なんとか寝ることができないだろうかと、薬を飲みまくっていましたね。
では、公開を楽しみにしている岐阜のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
岐阜のみなさんには、ロケ地を探すときから、めちゃくちゃ協力していただきました。撮影で使う昭和の自転車や家具なども、地元のみなさんが集めてきてくださったんですよね。そういう意味でも地元のみなさんと一緒に作ったような感覚なので、ぜひ観に来ていただけたら嬉しいです。(終)
雑魚どもよ、大志を抱け!
すべての弱虫たちに花束を。
少年時代の葛藤、勇気、そして旅立ちを描いた、感動の物語
【上映期間】
2023年3月24日(金)上映開始
【STORY】
地方の町に暮らす平凡な小学生・瞬。心配のタネは中学受験のためにムリヤリ学習塾に入れられそうなこと。仲間たちととにかく楽しく遊んでいたいだけなのに…。ある日、瞬は、いじめを見て見ぬ振りしてしまう。卑怯で弱虫な正体がバレて友人たちとの関係はぎくしゃくし、まるで罰が当たったかのような苦しい日々が始まる。大切な仲間と己の誇りを獲得するために、瞬は初めて死に物狂いになるのだった。
【キャスト、監督、配給、上映時間】
池川侑希弥(Boys be/関西ジャニーズ Jr.)、田代輝、白石葵一、松藤史恩、岩田奏、蒼井旬、坂元愛登、臼田あさ美、浜野謙太、新津ちせ、河井青葉/永瀬正敏
監督:足立紳
配給:東映ビデオ
時間:145分
©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会
【映倫】PG12
【公式HP】