ノルアドレナリンとは?作用やアドレナリンとの違いについて解説
目次
ノルアドレナリンとは?
「やる気ホルモン」「集中ホルモン」とも呼ばれるノルアドレナリンについてご存じでしょうか。ノルアドレナリンが増えるとどんな仕事や勉強にどんな効果があるのでしょうか。この記事ではノルアドレナリンの作用や増やし方・減らし方、アドレナリンとの違いについて解説します。
ノルアドレナリンはホルモンの一種
ノルアドレナリンは緊張や不安、恐怖などのストレスを感じたときに脳で分泌されるホルモンの一種で、神経伝達物質として脳や全身に対して様々な役割を持っています。
大事なプレゼンの時などに緊張して「冷や汗をかく」「口が渇く」「体が震える」などの経験はないでしょうか。これらの反応は緊張のストレスによって自律神経の交感神経が活発に働き、ノルアドレナリンが分泌されることによって起こります。
こう聞くとノルアドレナリンは良くない働きをするホルモンのように思えますが、ノルアドレナリンには下記のような様々な役割を持っています。
ノルアドレナリンのおもな役割
・意欲、活動力、集中力、判断力を高める
・記憶力や学習能力を高める
・ストレスに対抗する
・心拍数や血圧を上げる
絶対に落とせない大事な試験を受けている時などは試験時間が短く感じられることがあると思いますが、これはノルアドレナリンが分泌され集中力が高まっている状態です。
本来こうした反応は弱肉強食の野生の中で生き抜いてきた人類が「防衛反応」として、動物から襲われた際に素早く反応できるように身に付けたものです。
適度な緊張は集中力を高め、学習能力を上げるメリットがあります。作業効率を上げたいときは少し自分にプレッシャーをかけてみるのも良いかもしれません。
アドレナリンとの違い
「ノルアドレナリン」とスポーツの世界などでよく聞く「アドレナリン」にはどんな違いがあるのでしょうか。
アドレナリンは「戦闘ホルモン」とも呼ばれ、興奮した時やストレスを感じたときに分泌され、身体機能を向上させたり、心拍数や血圧を上げたりする作用があるホルモンです。
そんなアドレナリンですが、実はノルアドレナリンがつくる役割を担っています。
ストレスを感じるとノルアドレナリンが分泌され、判断力・集中力が高まり、さらに分泌されたノルアドレナリンからアドレナリンがつくられることで身体機能が向上します。
先ほど、野生の中で生き抜いてきた「防衛反応」について説明しましたが、ノルアドレナリンが増えることで「逃げるか、戦うかの判断力」が上がり、アドレナリンが増えることで「逃げる、戦うための身体能力」が上がる、と考えるとわかりやすいでしょう。
セロトニン・ドーパミンとの関係
ノルアドレナリンは、「快楽ホルモン」と呼ばれるドーパミン、「しあわせホルモン」と呼ばれるセロトニンとも深い関係があります。これら3つの神経伝達物質はまとめて「モノアミン」とも呼ばれています。
ドーパミンは楽しい経験や嬉しい経験をするときのワクワク感を感じている時に分泌されるホルモンです。
そんなドーパミンには「ノルアドレナリンをつくる」という重要な役割があります。
楽しい経験をしてドーパミンが分泌されることで、さらに次の仕事を集中するためのノルアドレナリンも作られます。
一方セロトニンは朝、太陽の光を浴びることや規則正しい生活を送ることで分泌が高まるホルモンです。
セロトニンには、「ドーパミン・ノルアドレナリンの働きを抑える」という役割があります。ドーパミンによる興奮状態やノルアドレナリンによる緊張状態はセロトニンが分泌されることによって心が落ち着き、気分がリセットされるのです。
ドーパミンの主な役割
・ノルアドレナリンをつくる
・興味を持ったものを手に入れたいと意欲をつくる
・目標を達成した時に喜びや幸せ、感動をもたらす
セロトニンの主な役割
・ドーパミン・ノルアドレナリンの働きを抑える
・心のバランスを整える
・ストレスを緩和する
・生体時計をリセットする
・腸内環境を整える
ドーパミンがノルアドレナリンをつくることで集中力を生み出し、それら2つのホルモンが増えたときにはセロトニンがその働きを抑える、こうした働きによって私たちの心はバランスを保っているのです。
ノルアドレナリンの作用を減らすためには
プレゼンなどで緊張しすぎてしまう方はノルアドレナリンの作用を抑えるセロトニンの分泌を促してあげることが効果的です。
セロトニンの分泌量を増やすためには
①セロトニンの元となるトリプトファンが多く含まれる食品(大豆食品・乳製品・穀類)をバランスよく食べる
②朝、起きたら太陽の光を浴びる
③規則正しい生活をする
などの行動が効果的です。
ノルアドレナリンが過剰に分泌されると
では、ノルアドレナリンの分泌量が増えすぎてしまう(過剰分泌)とどんな影響があるのでしょうか。
イライラして攻撃的になる
集中力や判断力が高まるノルアドレナリンですが、ずっとその状態が続くとだんだんイライラして攻撃的になってしまい、場合によってはパニック発作を起こすこともあります。起こっている時やイライラした時には正常な判断はできません。こうしたことからノルアドレナリンは「怒りのホルモン」とも言われることもあります。
アドレナリンの増加でさらに焦りが助長される
ノルアドレナリンの分泌量が過剰になると、自然とアドレナリンの分泌量も過剰になってしまいます。そうすると心拍数が上がり、冷や汗をかく量も増えてしまいます。そうした体の変化がさらなる焦りやストレスを呼び悪循環に陥ってしまいます。
ノルアドレナリンの分泌が不足にすると
では一方でノルアドレナリンの分泌量が不足するとどうなってしまうのでしょうか。
気力の低下
ノルアドレナリンの低下は、気力ややる気の低下につながります。「やらなければならない仕事があるのにやる気が起きない」「目の前の作業のことをあまり考えたくない」と感じたらノルアドレナリンの分泌量が低下してしまっている可能性があります
物事への関心の低下
ノルアドレナリンの分泌量が不足することはすなわち「快楽ホルモン」ドーパミンの分泌量も不足にもつながることになります。「何をしても楽しくない」「仕事をする達成感が感じられない」状態が続くと、仕事や作業の内容だけではなくその他の物事すべてに対する興味・関心の低下が発生します。
ノルアドレナリンは「うつ病」にも関係している
ノルアドレナリンは分泌量が過剰になってもいけませんし、不足してもいけません。自身に適度なストレスを与えてあげることで最も効果を得ることができます。
ノルアドレナリンを含めたモノアミンの分泌バランスが乱れることで発症する心の病気に「うつ病」があります。うつ病はストレスの多い現代社会で患者数が増えている心の病気ですが、原因はストレスがかかる環境が増えているからだと考えられます。
うつ病の治療には「抗うつ薬」の存在が欠かせませんが、これらの薬は、ノルアドレナリンなどの作用を正常に戻すことを目的に作られています。
まとめ
ノルアドレナリンは適度にストレスを与えられることで分泌量が増え、脳の活動力が上がり、仕事や作業での結果を得ることができます。しかし、そのストレスの量が増えるとうつ病の原因にもなってしまいます。自身が感じるストレス量をしっかり管理して、ノルアドレナリンの分泌量を適度に保つことが仕事や作業の効率アップにもつながります。ぜひ実践してみてください。
参考 伊藤裕(2017)『ココロとカラダを元気にするホルモンのちから』高橋書店 野村総一郎(2016)『うつ病のことが正しくわかる本』西東社 工藤孝文(2020)『人生が変わるホルモンコントロール術 はたらくホルモン 朝1杯の牛乳が夜の睡眠を変える』講談社