起業すると補助金がもらえる?地域ごとの制度や助成金との違いについて説明
「事業資金が足りない」
「起業するには何を準備すればいいの?」
「起業のことを誰に相談すればいいかわからない」
このように、起業を考えている方の中には、多くの不安や疑問があるのではないでしょうか。
本記事では、補助金と助成金の違いを始め、その種類や特徴・注意事項、さらに岐阜県内での事業支援事例や相談窓口を紹介しています。
この記事を読むことで、起業の際に使える補助金や助成金の特徴が把握できます。その知識を基に、これから始める事業内容に合ったものを選び、起業時や起業してからの不安を少しでも取り除いて、円滑に事業を進めていきましょう。
起業を考えている方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。
目次
補助金と助成金はどう違う?
「補助金」も「助成金」も、「国や自治体などから受け取れる交付金」という点では同じですが、細かい部分では違いがあることを把握しておきましょう。
・補助金:経済産業省管轄で、企業の販路開拓や生産性向上など、事業を通した公益のために活用されるもの
・助成金:厚生労働省管轄で、雇用拡大・労働環境改善などのために運用されるもの
それぞれに管轄する省庁が違い、資金を使う目的も制度によって設定されています。ここからは、様々な角度から補助金と助成金について説明していくため、ぜひ参考にしてください。
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=330AC0000000179
出典:事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
補助金とは
補助金は様々な省庁で公募していますが、企業に対しての事業補助を管轄しているのは、主に経済産業省です。
研究開発・新市場開拓・地域振興・設備投資など、補助金を交付する目的が設定されており、申請の要件を満たすためには企業の目的と補助金交付の目的が一致していることが重要になります。
補助金交付までの全体的な流れは、公募、申請採択、事業実施、事業報告、補助金交付の順になります。
助成金とは
助成金には、雇用関係助成金と労働条件助成金の2種類があります。
受給申請に際しても細かな条件があり、就業規則・労働条件通知書・賃金台帳・出勤簿・従業員名簿等の提出も必要です。
受給申請の流れは、計画書作成・申請・事業実施・支給申請の順です。一定の要件を満たしていれば、申請することで助成金を受け取れます。
起業時の補助金や助成金はいくつかの種類に分類される
起業時の補助金や助成金はいくつかの種類に分類されるのをご存知でしょうか。ここでは、補助金や助成金の管轄ごとに分けて解説していきます。
まずは、経済産業省系の補助金・助成金です。地域活性化や技術振興といった施策を目的としており、採択率に幅があるのが特徴となっています。
次に、厚生労働省系の補助金・助成金です。雇用促進などの施策を目的としており、要件を満たすことができれば確実に採択されるという特徴があります。
自治体独自の補助金・助成金もあります。地域内の産業を振興させるなどの施策を目的としていますが、積極的な自治体とそうでない自治体があるため、起業する際はしっかりと確認しましょう。
最後に、上記以外の補助金・助成金です。政府系金融機関や大手企業など、独自に補助金や助成金を行っている場合があります。限られた優秀な起業家のみが採択されるため、しっかりとした隙のないビジネスプランが必要になるでしょう。
自信のあるビジネスプランが作成できたのであれば、チャンスを掴むことができる可能性もあるため、応募してみるのもおすすめです。
経済産業省の管轄の主な補助金
多くの企業が活用している企業支援のための補助金にはたくさんの種類がありますが、ここでは起業時に使える制度を紹介します。
以下の補助金の中には人気の制度もあり、競争率が高くなる可能性があるため、それぞれの内容をしっかりと確認しておきましょう。
事業再構築補助金
今までの事業内容を大きく変え、新分野展開や業態転換など新たな取り組みを支援するための資金が支給される制度です。
補助金額は、通常枠・従業員20人以下で100万円~2,000万円、補助率は中小企業者等で2/3となります。
2020年4月1日~12月31日の期間で起業した方は特例的に支援対象となり、要件を満たすことで申請できます。
出典:事業再構築補助金|経済産業省
参照:https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
出典:令和二年度第三次補正・令和三年度補正・令和四年度予備費 事業再構築補助金 公募要領|事業再構築補助金事務局
参照:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo007.pdf
ものづくり補助金
正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
革新的な製品・サービス開発や生産性向上のための設備投資等を実施する企業に対しての支援制度です。
補助金額は、一般型・通常枠・従業員5人以下で100万円~750万円、補助率は1/2となっており、その他に賃上げ・雇用拡大など4つの枠が用意されています。
出典:モノづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領|ものづくり・商業・サービス補助金事務局
参照:https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/12th/reiwakoubo_20220909.pdf
IT導入補助金
この補助金は、ITツールを導入することで業務効率化を図り、企業の生産性向上を図るための資金です。補助金額は通常枠・A類型で30万~150万円未満・補助率1/2以内となっています。
法人税や所得税の納税証明書や、確定申告書Bの控えを提出する必要があるため、起業して1年経過の後、納税証明書が発行可能になってからの申請となります。
出典:事業概要|一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
参照:https://www.it-hojo.jp/overview/
出典:IT導入補助金2022|一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
参照:https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines.pdf
小規模事業者持続化補助金
従業員が規定人数以下の小規模事業者を対象とした、販路開拓と生産性向上等のための制度です。年間の公募回数も多く、申請しやすい補助金といえるでしょう。
補助金額は通常枠で上限50万円、補助率2/3です。商工会・商工会議所とともに事業計画書を作成する必要があります。
創業枠は、公募締切日から起算して過去3年以内に、地域で実施される特定創業支援等事業による支援を受けた証明書を添付することが条件の1つとなっています。
出典:令和元年度補正予算・令和 3 年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型> 公募要領|全国商工会連合会
参照:https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo.pdf
厚生労働省の管轄の主な助成金
厚生労働省では、雇用・労働関係の助成金をメインに管轄しています。
雇用創出や拡大・人材育成・労働環境整備などが主となり、企業が実施した前述のような事業に対して助成されるものです。種類は多岐にわたるため、自社に合ったものを選んで活用してください。
キャリアアップ助成金
アルバイトやパートといった非正規雇用者の正社員化・処遇改善等を実施した企業に対して支給されます。労働者のモチベーションアップや、生産性向上にも繋がる点がメリットです。
なお、令和4年10月1日よりコース内での正社員と非正規雇用労働者の定義が変更となる予定です。
出典:「キャリアアップ助成金」を活用して従業員を正社員化しませんか?|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/000989674.pdf
出典:キャリアアップ助成金が変わります~令和4年4月1日以降変更点の概要~|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/000923180.pdf
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、労働者の雇用環境を整備することで支給される助成金です。
9つのコースに分かれていますが、令和4年4月1日より受付を休止しているコースや、既に廃止されているコースもあるため、しっかりと確認しておきましょう。
出典:雇用関係助成金検索ツール|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00007.html
中途採用等支援助成金
中途採用拡大コースは、労働条件等の雇用管理制度を整備し、取り組み計画期間内に中途採用の拡大を図った事業主に助成されるのが特徴です。一定期間が経過した後に企業の生産性が向上した場合、追加の助成金が支給されます。
その他、東京圏からの地方移住者を採用するための募集費用等が助成されるコースもあります。
出典:中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160737_00001.html
出典:中途採用等支援助成金(UIJターンコース)|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082805_00002.html
地域や自治体による制度も様々
岐阜県産業経済振興センターでは、「岐阜県スタートアップ企業支援補助金」という制度が実施されています。
起業を考えている方や、起業して5年未満の方で金融機関や商工会・商工会議所等から推薦を受けていることなどが申請の要件を満たす条件です。
その他にも、県主催による事業化への準備を支援する事業や、女性のための起業講座なども開催されています。
出典:令和4年度岐阜県スタートアップ企業支援補助金|公益財団法人 岐阜県産業経済振興センター
参照:https://www.gpc-gifu.or.jp/topics/2022052001/index.asp
その他の補助金や助成金
前述の他にも、「公益財団法人三菱UFJ技術育成財団」では、新技術や新商品等開発のための研究開発助成金の制度を実施しています。
また、「株式会社パソナグループ」では女性の社会進出支援や地方活性化推進などを応援する、「女性起業家支援トータルプログラムLadies Be Ambitious!!」という取り組みもあります。
このように、国や地方自治体以外でも起業に対してのサポートを実施する企業があるため、ぜひ参考にしてください。
出典:研究開発助成金|公益財団法人三菱UFJ技術育成財団
参照:https://www.mutech.or.jp/subsidy/
出典:パソナグループ女性起業家支援トータルプログラム : Ladies Be Ambitious!!|株式会社パソナグループ
参照:https://www.pasonagroup.co.jp/lba/
起業する際に補助金などを申請するメリット
起業時に補助金を申請する際に、これから始める事業に関する計画を具体化できることは、大きなメリットといえるでしょう。
補助金を獲得するためには収益性や実現性が重視されます。それらが曖昧だったり低かったりすれば、補助金の交付は望めません。逆に、しっかりとした計画ができていれば、起業後の仕事もスムーズに進むでしょう。
ここからは、起業する際に補助金などを申請するメリットについて詳しく紹介していきます。
制度を利用すると他者からの信用を得ることができる
補助金を得るためには厳正な審査を通過する必要があります。その審査の基準となるのが「事業計画書」です。この出来次第で採択率が大きく変わります。
起業前であれば、自分がこれからどのように経営していきたいのか、将来的にどうなりたいのかを考えるきっかけとなるでしょう。
作成した事業計画書が採択されれば、自分の計画が認められたことになります。また、しっかりとしたビジョンを持って取り組んでいる証明にもなるため、他者からの信用が得られるでしょう。
返済不要の資金がもらえる
補助金・助成金は基本的に返済が不要です。
申請書や事業計画書・実績報告など、やるべきことは沢山ありますが、返済不要で事業資金の一部を支援してもらえる可能性があるため、申請してみることをおすすめします。
書類の審査時に第三者の意見を聞くことができる
補助金の申請の際に、認定支援機関で申請書類に目を通してもらって添削やアドバイスを受けるのも良い方法です。
補助金を申請するにあたっては、認定支援機関の確認証明などの添付が必要なものもあります。金融機関に足を運ぶことも増えるため、その時に申請書類に対する添削やアドバイスなどを受ければ、より良い内容の計画書が作れるでしょう。
積極的に認定支援機関の相談窓口を活用しましょう。
起業する際に補助金などを申請するデメリットとは
ここまで見てきたように、補助金は申請すればもらえるというものではありません。支給されるまでには様々なハードルが存在するため、知らないまま進めていくと思わぬ落とし穴にはまることもあるでしょう。
起業するにあたっては補助金を申請するデメリットもあるため、事前に確認しておきましょう。
以下に挙げる注意点を把握し、スムーズに申請まで進めてください。
申請のための書類の用意が大変
補助金の審査を突破するためには、合格基準以上の内容を伴った事業計画書を提出する必要があります。人気のある補助金は申請者が多いため、さらに合格率は低くなると考えておきましょう。
事業計画書の内容の基準は、自社のPRと現状・問題点などを提示し、補助金を活用してどういった成果が得られるのかについて、分かりやすくストーリー性を持って作られているかどうかです。
これから始める事業の内容をしっかりと相手に伝えましょう。
申請には条件や審査が必要
補助金によって、公募条件や使用目的、対象となるものに違いがあります。
自社が必要としている課題と補助金の目的が合致していなければ、最初の関門すら突破できません。申請者についてもいくつか条件があるため、併せて確認しておきましょう。
補助金は、募集人数や予算にも上限があります。
厳正な審査をもって採択者が決定されるため、専門家のアドバイスを受けて事業計画書の作成を行った方が採択率が上がるといわれています。
ほとんどの場合が後払いになる
補助金の支給申請が可能になるのは、提出した計画書通りに事業を実行し、実績報告が承認されてからです。そのため、計画した事業を実行するためには、自己資金を充てる必要があるでしょう。
自己資金が足りない場合は、融資の話を進めておくことをおすすめします。
金融機関には「つなぎ融資」という制度があるため、補助金が支給されるまでの間の融資を相談してみましょう。
申請の応募期間には注意が必要
募集時期や募集期間は補助金によって異なりますが、事業年度が新たに開始される4月以降から公募開始されるケースが多く見られます。
募集期間は1ヵ月前後の場合が多く、大変短くなっているため、早めの準備を心掛けましょう。
岐阜の金融機関での事業支援事例
経済産業省の政策の一つに「新規事業・スタートアップ」というものがありますが、その中には、起業応援の融資制度の整備が含まれています。
これを受け、岐阜県の金融機関でも事業支援を実施しているため、いくつか例を挙げて見て行きましょう。
出典:新規事業・スタートアップ|経済産業省
参照:https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/index.html
十六銀行:じゅうろく創業応援ローン「チャレンジサポート」
創業や新事業開拓・展開を考えている方を対象とした融資制度です。
「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家資金」「中小企業経営力強化資金」の3種類がありますが、「女性、若者/シニア起業家資金」「中小企業経営力強化資金」の併用を前提に、無担保・無保証人扱の「新創業融資制度」も利用できます。
利用を申し込む際には、創業計画書や事業計画書などを提出してください。起業前の場合は、創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要ですが、条件によっては、そこまでの自己資金がなくても要件を満たせる場合もあるため、まずは窓口に相談しましょう。
出典:じゅうろく創業応援ローン「チャレンジサポート」(協調口)|株式会社 十六銀行
参照:https://www.juroku.co.jp/corp/loan/challenge_kyoutyou.html
出典:政策金融機関の業務の概要|日本政策金融公庫
参照:https://www.jfc.go.jp/n/company/summary.html
大垣共立銀行:女性のための「起業応援融資」
起業予定、もしくは起業して間もない女性を対象とした融資制度です。法人企業の場合は、代表取締役が女性の場合に限られています。
創業計画書や事業計画書などの提出が必要となりますが、低金利での借り入れが可能です。
出典:女性のための「起業応援融資」|株式会社 大垣共立銀行
参照:https://www.okb.co.jp/company/fund/female-support.html
岐阜県で事業支援や相談受付を行なっている主な施設
岐阜県内には、事業に関する相談ができる施設が複数あります。
身近な所では市役所・町役場、商工会・商工会議所など、その他で公益財団や金融機関でも相談に応じてもらえます。
以下でいくつか紹介していくため、ぜひ参考にしてください。
岐阜県産業経済振興センター
岐阜県産業経済振興センターでは、企業・創業に関する相談窓口を無料で利用できます。
コーディネーターが、それぞれの悩みに対応した専門家に繋いでくれます。同センターには、「よろず支援拠点」という公設のコンサルティング機関があり、多数の専門家が登録されているため、あらゆる相談に対応可能です。
また、女性の起業・創業に関する悩みに関しても、助成創業アドバイザーが対応します。
岐阜市創業支援ルーム
岐阜市では、創業者やベンチャー企業の育成・支援のために「岐阜市リモートオフィスNeo Work-Gifu」内の施設を低料金で貸出中です。
情報交換や新事業・新サービスのアイデア創出の場となることを目的とした共有施設で、様々な業種の人達が利用しています。
同施設内では、無料セミナーが開催されています。また、スタートアップ相談窓口も設置されており、常駐する相談員の方が起業や経営の相談に無料で乗ってくれるため、ぜひ利用してみましょう。
出典:スタートアップ支援|一般社団法人岐阜みらいポータル協会
参照:https://www.neowork.life/link
岐阜県信用保証協会
岐阜県信用保証協会では、岐阜県内で起業して1年未満の方やベンチャー企業を開業している方を対象にした「県創業支援資金」の融資が可能です。
運転資金の保証限度額は4,000万円と高額で、運転資金の保証期間も7年以内となっています。利率も1.2%(償還期間が10年を超える場合は年1.6%)と低めの設定です。
2023年3月31日の融資実行分までは信用保証料率が年0.00%となっているため、利用しやすいでしょう。
出典:創業支援資金(県創業)|岐阜県信用保証協会
参照:https://www.cgc-gifu.or.jp/hosho/sogyo-hosho/entry-857.html
起業時はその地方の補助金の制度についても調べて活用しよう
岐阜県に限らず、各市町村では国の認定を受けた自治体が商工会・商工会議所・民間事業者などと協力し、起業希望者や起業して間もない方を支援する「認定特定創業支援等事業」を実施しています。
自治体によって違いはありますが、個別面談やセミナーを受講し、支援を受けながら創業計画書を作成するのが一般的な流れでしょう。
このようなプログラムを受講することで証明書が発行され、様々な優遇も得られるため、ぜひ近くの関係機関に相談してみましょう。