年金制度とは?Z世代向けにFPがわかりやすく解説![前編]~賦課方式と積立方式~
「年金」について、今の若い世代の方の中には、「まだ先のこととして深く考えていない」「難しい」「もらえなくなる」「あてにならない」等、ネガティブな印象を持っている方が多いのではないでしょうか。
少子高齢化に伴って年金財政が厳しいといったニュースや老後の必要資金2000万円問題などを見聞きしているとそういったイメージになるのも無理はありません。
しかし、少子高齢化により年金財政は厳しくなることは確かですが、今の年金制度にはその対策も組み込まれており、年金額がゼロになることや年金制度がなくなることはありません。
そのため、過度にネガティブな考え方をせず現在の年金制度について知り、今自分たちがどういう役割を果たし、行動をしていくべきなのか考えていきましょう。
年金制度とは?
そもそも年金制度というのは、長い期間にわたって財政のバランスを取りながら運営をしていく制度です。世界の国々にも年金制度は導入されており、現役世代が保険料を負担することで年金支払いの財源が確保されていますが、その財源確保の方法として「賦課方式」と「積立方式」の2種類があります。
まず「賦課方式」は、年金受給者へ支払う財源をその時々の年金保険料収入からまかなう方式です。保険料を支払っている現役世代から年金受給者へ仕送りをしているイメージです。
もう1つの「積立方式」は自分たちが払った保険料で将来の自分たちの年金をまかなうものです。自分で自分の年金を確保するという意味では理にかなっていると思われるかもしれません。
賦課方式のメリット・デメリット
賦課方式はその時の現役世代の給与から計算された保険料をその時の水準で受給者へ年金として支払うことができる点がメリットです。インフレや経済環境の変化に対応しやすいといえます。
しかし、少子高齢化で保険料を支払う現役世代と年金受給者のバランスが崩れると現役世代の保険料を上げたり、支払われる年金額を減らさなければならないというデメリットがあります。
積立方式のメリット・デメリット
一方、積立方式は支払った保険料を将来の年金支払い時まで長期間運用することになります。 この積立方式は、高齢化の影響を受けにくいというメリットがあります。
しかしその一方で、その間にインフレや運用環境の変化が起こった場合に運用リスクを自分かぶることになるというデメリットがあります。
例えば、過去に起こったリーマンショック時のように、年金の受け取りがちょうど運用環境が悪化したときに始まった方は、大きく目減りした保険料積立金を年金として受け取ることになり、世代によっては不公平感があらわれます。
日本で採用されているのは「賦課方式」
それぞれのメリットデメリットを検討した結果、日本を含む先進諸国の年金制度には「賦課方式」が採用されています。これは、公的年金制度が、将来安心して暮らしていくため、そして高齢で働くことが困難になった時などの生活を支えるという役割も担っているからです。
実際、今の日本国内における高齢世帯の収入のうち6割を年金が占めていて、約半数の高齢者世帯が年金収入のみで生活されています。そのため、年金が年金としての価値が下がる可能性がある積立方式のリスクを無視することができないのです。
そして、賦課方式を採用するにあたりデメリットとなる少子高齢化に伴うリスクに対しては、保険料収入から年金支払いをして残ったお金を積み立てておき、バランスが崩れた時にその積立金を充てて補うことになっています。
その積立金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって管理運用されています。運用先は国内外の債券や株式で、運用状況は四半期ごとにGPIFのホームページに掲載されていますので一度ご覧になってみるといいかもしれません。(続く)
中編(年金の種類ともらえる金額)はコチラ
後編(ねんきん定期便とZ世代が抱える課題)はコチラ
折戸 知美
岐阜市生まれ、岐阜市在住。生命保険会社に事務職として在籍中、ファイナンシャルプランニングについて正しく伝える必要性を感じFP資格を取得し独立。岐阜県内を中心にセミナー・個別相談業務を行っている。