仮想通貨に税金はかかる?確定申告の有無や計算方法を紹介。
仮想通貨に興味がある人、すでに始めている人が気になるのが、仮想通貨にかかる税金でしょう。
仮想通貨で発生した利益は雑所得となり、条件に該当した場合は確定申告が必要です。確定申告をしないとペナルティが発生する恐れがあるため、仮想通貨に関する税金や確定申告の有無について事前に把握しておきましょう。
仮想通貨が課税対象になるタイミングや所得の計算方法、確定申告について解説します。
目次
仮想通貨(暗号資産)に税金はかかるのか
仮想通貨は、タイミングによって税金が発生します。
まずは、仮想通貨の意味と、発生する税金について解説します。
仮想通貨とは
仮想通貨とは、インターネット上で不特定多数の個人間で取り引きされる電子マネーのことです。取引や残高を記録するホストコンピューターが存在せず、ブロックチェーン技術によって銀行などの仲介者なく金銭のやり取りができます。
仮想通貨は、法定通貨への交換や決済ができますが、国によって価値が保証されておらず、需給関係などによって価値が変動します。
仮想通貨の利益は雑所得
仮想通貨の利益は、雑所得に該当します。
雑所得とは、事業所得や給与所得などの10種類の所得税のうちのひとつで、ほかの所得に当てはまらない所得を指します。
雑所得は総合課税のため、ほかの所得と合算した総所得金額に応じた税率で税額を計算します。所得税の税率は、5%~45%です。
一方で、1年間の仮想通貨の収入金額が300万円を超え、仮想通貨取引に係る帳簿書類の保存がある場合は、事業所得となります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
参考:国税庁「No.1500 雑所得」
参考:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
仮想通貨が課税対象になるタイミング
仮想通貨は、取得済みのものをただ所有している場合は課税対象になりませんが、次の4つのタイミングでは課税対象となるケースもあります。
- 仮想通貨を売却したとき
- 保有している仮想通貨を別の仮想通貨に交換したとき
- 仮想通貨を使って商品やサービスを購入した時
- マイニングで収益を出したとき
参考:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
仮想通貨を売却したとき
仮想通貨の売却によって利益が発生した場合は、課税対象となります。
例えば、200万円で2BTCを購入し、後日0.1BTCを11万円で売却した場合、利益が1万円発生します。
【計算式】
11万円―{(200万円÷2BTC)×0.1BTC}=1万円
保有している仮想通貨を別の仮想通貨に交換したとき
保有しているビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨を別の仮想通貨に交換したときも、別の仮想通貨を購入したことになるため、課税対象となる可能性があります。
例えば、200万円で2BTCを購入し、後日50ETH(交換レート1ETH=3万円)の購入のために1BTCを支払った場合、50万円の利益です。
【計算式】
(3万円×50ETH)―{(200万円÷2BTC)×1BTC}=50万円
仮想通貨を使って商品やサービスを購入したとき
仮想通貨を使って商品やサービスを購入した際も、仮想通貨の譲渡とみなされ、発生した利益が課税対象となります。
例えば、200万円で2BTCを購入し、後日、30万円の商品の購入時に0.2BTC(交換レート1BTC=120万円)を支払った場合は、10万円の利益です。
【計算式】
30万円―{(200万円÷2BTC)×0.2BTC}=10万円
マイニングで収益を出したとき
仮想通貨の売買取引を記録するマイニングで収益を得た場合も、所得税の対象です。
マイニングによって取得した仮想通貨の取得時点の価額が総収入金額に算入され、発生した費用は必要経費になります。
仮想通貨の取引で確定申告が必要になる条件と注意点
仮想通貨の取引で、確定申告が必要になるケースとしなかった場合のペナルティを解説します。
確定申告とは
確定申告とは、1年間の所得を国に申告することです。所得の申告によって、所得税や社会保険料、法人税などが確定するため、定められた期日までに納税をします。
個人の場合、所得を計算する期間は1月1日から12月31日までで、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行います。確定申告書の提出方法は、税務署への持参や郵送、e-Taxでの電子申告、税務署の時間外収集箱への投函の4つです。
確定申告の対象者は、フリーランス、個人事業主、副業などの収入が20万円以上ある人、2カ所以上から給与をもらっている人、給与総額が2000万円以上の人などです。
参考:国税庁「確定申告が必要な方」
年間の利益が20万円を超えた場合は確定申告が必要
仮想通貨の総収入額から必要経費を差し引いた額が20万円を超えると、確定申告が必要です。
なお、仮想通貨の利益が20万円を超えていなくても、ほかの利益と合算して20万円を超える場合も申告しなければいけません。
確定申告をしなくてもよい場合
仮想通貨で確定申告が不要なケースは、年間の利益が20万円を超えない場合と、仮想通貨をただ持っているだけの場合です。
仮想通貨の取引で利益が確定しない限りは、含み益が発生している場合でも確定申告をする必要がありません。
確定申告をしなかった場合のペナルティ
確定申告の対象者が確定申告をしなかった場合は、無申告加算税が課せられます。無申告加算税の割合は、原則、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、無申告加算税の割合が5%に軽減されます。また、法定申告期限から1か月以内に自主的な期限後申告が行われ、期限内申告をする意思があったと認められる場合は、無申告加算税は課されません。
悪質な隠蔽や仮装によって無申告だった場合には、所得税額に対して40%の重加算税が課されます。
確定申告に関するペナルティは、金額を過少申告していた場合にも発生します。確定申告で金額を少なく申告しており、税務調査や申告税額の更生を受けると、過少申告加算税がかかります。
過少申告加算税は、新たな納税額の10%相当です。新たな納税額が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合は、超過部分について15%になります。
納期限までに税金を納めなかった場合には、納期限の翌日から2か月経過するまでは原則年7.3%、2か月を経過した場合は原則年14.6%の延滞税がかかるため、注意が必要です。
参考:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」
参考:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」
参考:国税庁「No.9205 延滞税について」
参考:国税庁「無申告事案における重加算税の賦課要件」
仮想通貨の所得の計算方法
仮想通貨の所得の計算方法は、「総平均法」と「移動平均法」の2種類あります。
仮想通貨の計算方法は、初めて仮想通貨を取得した場合、もしくは異なる種類の仮想通貨を取得した場合に、取得した年分の確定申告の期限内に「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を税務署に提出して選定します。
届出書を出さない場合は、「総平均法」で計算することになります。
総平均法とは、1年間の仮想通貨の平均購入価格と売却価格の差額を利益として所得を求める方法です。
———————
【計算式例】
1年間に1種類ずつ、40万円、30万円、50万円の仮想通貨を購入し、60万円と65万円で1種類ずつ売却した場合
(40万円+30万円+50万円)÷3=40万円(平均購入価格)
60万円+65万円=125万円(売却価格)
125万円―(40万円×2)=45万円(利益)
———————
移動平均法は、仮想通貨の購入のたびに購入額と残高を平均し、売却価格との差額から利益を求め、所得を算出する方法です。
———————
【計算式例】
1月:1種類50万円で購入
4月:1種類40万円で購入
7月:1種類を55万円で売却
10月:1種類30万円で購入
12月:1種類40万円で売却
(50万円+40万円)÷2=45万円(売却時の単価)
55万円―45万円=10万円(利益)
(45万円+30万円)÷2=37.5万円(残高と購入額の平均単価)
40万円―37.5万円=2.5万円(利益)
10万円+2.5万円=12.5万円(売却時の利益の合計)
———————
なお、計算方法を変更したい場合は、「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を税務署に提出する必要がありますが、特別の理由がなければ変更前の計算方法で3年を経過していないと、申請が却下される可能性があります。
参考:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
仮想通貨による所得に対する税金額を抑えるポイント
仮想通貨の取引で発生する所得税額を抑えるポイントがあります。
仮想通貨の取引をする際には、次の4つのポイントを意識するといいでしょう。
- 取引にかかった経費などを漏れずに計上する
- 利益の確定を年間20万円以内に収める
- 複数の仮想通貨同士で損益通算をする
- 所得税に有効な税控除を利用する
それぞれのポイントについて解説します。
取引にかかった経費などを漏れずに計上する
課税対象となる所得額が少なくなれば、所得税額を抑えられるため、仮想通貨の取引にかかった必要経費などは漏れなく計上しましょう。
必要経費としては、仮想通貨の取得費用や手数料、仮想通貨に関わるセミナー代や書籍代などが挙げられます。
利益の確定を年間20万円以内に収める
副業収入の条件のみで見た場合、年間の利益が20万円を超えた場合は所得税が課されますが、20万円以内に収めれば所得税を支払う必要がなくなるため、利益の確定をコントロールすると節税につながります。
一方で、利益を20万円以内に収めた場合でも、所得に応じて加算される住民税の申告は必要です。確定申告を行うと申告内容が市区町村に送られますが、確定申告をしなければ情報が通知されないため、役所で住民税の手続きをします。
複数の仮想通貨同士で損益通算をする
複数の仮想通貨同士で損益通算をして、所得を抑えると節税できるでしょう。
損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺することです。雑所得に分類される仮想通貨は、給与所得などのほかの所得と損益通算できなかったり、損失を次年度以降に繰り越せなかったりといった特徴があります。
そのため、損失が出ている年に含み益がある仮想通貨の利益確定を行い、損益を0円に近付けると、無駄な損失をなくしながら、翌年度以降の所得を抑えられます。
所得税に有効な税控除を利用する
所得税は、「収入―必要経費―所得控除額」で算出された課税所得額に対して発生します。そのため、所得控除を利用すると、所得税を抑えることにつながるでしょう。
例えば、ふるさと納税の利用や、iDeCoへの加入が挙げられます。
記事執筆や校正など文字に関わる仕事を幅広く行う元金融業のフリーライター。静岡県在住だけど岐阜県も大好き。戦国武将の推しは斎藤道三。(ブログ:https://enmojilaboblog.com/)