アドラー心理学とは?仕事の人間関係を考え直す「勇気の心理学」をわかりやすく解説
目次
アドラー心理学とは?わかりやすく簡単に解説
あなたは周囲の人間関係で悩んでいることはありませんか?
仕事や学校など社会生活を送る中では様々な人との関わりがありますが、そのすべてが自分にとって前向きに取り組めるものではないと思います。
本記事ではそんな方にぜひ知って欲しい「勇気の心理学」アドラー心理学の教えをわかりやすく徹底解説します。あなたの人生を前向きにさせる教えがきっと見つかるはずです。
アドラーとは
アドラー心理学の創始者であるアルフレッド・アドラー(1870~1937)は、オーストリアの精神科医で、心理学の分野ではフロイト(1856~1939)、ユング(1875~1961)と並ぶ「3大巨頭」の一人として知られている人物です。日本では、2013年に発売され大ベストセラーとなった本『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(岸見一郎・古賀史健)によって一気に注目され、支持されるようになりました。
アドラー心理学の考え方と名言
現代日本で支持されるアドラー心理学の教え・考え方とはどんなものなのでしょうか。
アドラー心理学のキーワード
・劣等感
・目的論
・共同体感覚
・勇気づけ
・課題の分離
アドラーが残した名言と共に解説します。
劣等感
劣等感は、人が持つ器官や特徴、行動を他の人と比べた際に「自分は劣っている」と判断し、それに対して「負い目」や「恥」を感じることで発生する心の動きのことを指します。
アドラー心理学には「すべての人は共通して劣等感を持ち、それを取り除こうと努力することで改善していくのだ」という考え方が根底にあります。
例えば、「他の人より学歴で劣っていると感じた人が、他の人より努力してさらに高い知識や技術を身に付ける」などは劣等感がバネとなったケースです。
すなわち劣等感があることは、目標があることの証拠であり、悪いことではないのです。
アドラーの名言
あなたが劣っているから劣等感があるのではない。どんなに優秀に見える人にも劣等感は存在する。目標がある限り、劣等感があるのは当然のことだ
目的論
目的論とは「その人が持つ目的や目標に従った結果がAになった」という考え方です。目的論と対をなす考え方に「原因論(Aという結果の原因はBにある)」があります。
目的論と原因論の考え方の違いを下の例を見ながら考えてみましょう。
発生した出来事・結果
『大事な待ち合わせに遅刻してしまった』
原因論だと‥
「赤信号の連続が原因で遅刻してしまった」
目的論だと…
「だいたい待ち合わせ時間につけばよいという目標に従った結果遅刻してしまった」
上の例をみると、「遅刻した」という結果は同じですが、遅刻を自分以外のせいにしている原因論と、自身の低い目標が遅刻という結果を招いたという目的論では考え方が大きく異なることが分かります。
目的論で物事をとらえると、自分の目的や目標をどこに据えればよいかが明確になります。今回の例では、その人の中での目標を「途中のアクシデントを見越した到着時間」にすることで「時間までに待ち合わせ場所に到着できる」という結果につなげることが可能です。
アドラー心理学が掲げる目的論は結果から未来を見据えて新たな目標を立てられる考え方なのです。
アドラーの名言
我々が直せるのは、彼の具体的目標だけである。目標が変われば精神的な習慣や態度も変わるだろう。
共同体感覚
共同体感覚とは、人が全体の一部であること、全体と共に生きていることを実感することです。自身の利益のみを考えて、他人から得ることだけを考えている人ではなく、お互いにとって利益がある、いわば「win-win(ウィンウィン)」の関係になることを考えて行動することが共同体感覚の基本です。
また、アドラーの考える共同体のコミュニティは非常に広範囲です。共同体の範囲は
「家族」→「地域」→「国家」→「地球」→「宇宙」と広げることができますが、アドラーは全宇宙をも1つの共同体と考えています。
全宇宙にとって有益だと思われる行動をすること。現在、世界では戦争や紛争が発生している地域がありますが、共同帯感覚を意識することが世界平和への第一歩かもしれません。
アドラーの名言
人生とは仲間の人間に関心を持つこと、全体の一部になること、人類の福利にできるだけ貢献することである。
勇気づけ
アドラー心理学における「勇気づけ」とは、その人がもつ目標を理解し、目標が間違っていることをその人が理解できるように促し、正しい目標に向けた一歩を踏み出すために背中を押すことにあります。これがアドラー心理学が「勇気の心理学」と呼ばれる所以でもあります。
この中には自分自身に向けた勇気づけも含まれます。仕事や人間関係で自分の思った通りに行かず悩んでいる人は、ほんの少し目標の角度を変えることで現状が好転することもあります。
自分の正しい目標、共同体全体の正しい目標に向けた有益な行動なのであれば勇気を出して見方を変え、一歩踏み出してみることが大切です。
アドラーの名言
あなたが不幸なのは、過去や環境のせいではありません。ましてや能力が足りないのでもない。あなたには、ただ“勇気”が足りない。いうなれば「幸せになる勇気」が足りていないのです。
課題の分離
課題の分離とは「自分でコントロールできる課題(自分の課題)」と「自分ではコントロールできない課題(他者の課題)」を分離して考える態度のことを指します。
先輩や上司に意見や反論を言うときに「嫌な顔をされてしまうかも」などと不安になった経験はないでしょうか。この場合、先輩や上司がどう感じるかは、自分でコントロールできる課題ではありません。気にするべきなのは自分でコントロールできる「あなたが正しいと思う意見を述べる」ことです。
他者の課題まで気にした結果、自分の課題が達成されないのでは本末転倒です。自分でコントロールできない他者の課題は気にしない態度が、最終的には共同体全体の利益につながるのです。
アドラーの名言
陰口を言われても嫌われても、あなたが気にすることはない。相手があなたをどう感じるかは相手の課題なのだから。
子育てや人材育成の場で生きるアドラー心理学
アドラーは児童相談所を理論の実践の場として、子どもたちを対象にしたカウンセリングを行っていましたが、現代の子育てや人材育成の場においてアドラー心理学が応用できる場面は多数あります。コーチングやカウンセリングで悩む方は参考にしてみると良いでしょう。
甘やかさない!自然の結末を経験させる
失敗や困難な出来事から得られる経験は、自分の課題を自分自身で解決するために必要です。失敗や困難に合わないように甘やかしてしまうのは、子どもや部下の課題への介入に当たります。「かわいい子には旅をさせよ」ということわざもありますが、より大きな成長のためには自然の結末を知っておくことが重要です。
叱らない!自分の課題として考えさせる
勉強をしない子供に向かって「勉強しなさい」と言っても聞いてくれないのは、子どもが自分の課題であると認識していないからです。上から目線で叱るのではなく、対等な目線で、「テストで恥ずかしい点を取らないためにはどうしたら良い?」「営業目標を達成するためには何が必要ですか?」と促し、自分の課題として認識させてあげることが重要です。
褒めない!感謝の言葉で勇気づける
「褒める」とアドラー心理学の「勇気づけ」は似て非なるものです。褒めることは縦の人間関係があるからこそ生じる行為です。親や上司から褒められて育った子ども・部下は褒められることを目標に行動するようになり、ほめられないと不機嫌になったり不安になったりしてしまいます。
アドラー心理学の「勇気づけ」として有効なのは感謝の気持ちを表すこと
です。「頑張ってくれてありがとう」「成果が出てみんな喜んでいるよ」といった声かけは、正しい目標へと背中を押す「勇気づけ」につながります。
アドラー心理学について学べる本
アドラー心理学について書かれた本は多数あります。仕事・子育てなど応用したい場面に合わせて、選んでみてください。
「嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え」
アドラー心理学入門
リーダーのための勇気づけマネジメント ビジネスに生かすアドラー心理学
アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり
「嫌われる勇気」を持つことも大切
今回は「勇気の心理学」とも呼ばれるアドラー心理学について解説しました。アドラー心理学の考え方は仕事や教育など様々な場面で生かすことができます。時には「嫌われる勇気」を持つことも大切です。周囲との人間関係で悩んだらアドラー心理学の考え方を実践してみてはいかがでしょうか。
参考文献 中野明(2014)『超図解 勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』学研パブリッシング 中野明(2016)『超図解 アドラー心理学の「幸せ」が1時間でわかる本』学研パブリッシング 植木理恵(2013)『ビジュアル図解 心理学』KADOKAWA