心理的安全性とは?個人に与えるメリットと高める6つの方法を解説!
心理的安全性とは、自分の意見や気持ちを安心して発言できる状態のことです。
Googleのプロジェクトの結果によって注目を集めている心理的安全性は、個人と組織の双方にメリットがあります。
心理的安全性が与えるメリットとぬるま湯組織との違い、心理的安全性を高める方法についてご紹介します。
目次
心理的安全性とは
心理的安全性とは、組織のなかで自分の意見や気持ちを相手に関係なく安心して発言できる状態を意味します。
心理的安全性は、ハーバード大学の組織行動学者であるエイミー・エドモンドソンが1999年に発表した論文「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」で提唱された概念です。
心理的安全性が高い組織は、個人のストレスが軽減したり、組織の生産性が高まったりする効果が期待できます。
「ぬるま湯組織」との違い
「ぬるま湯組織」とは、従業員のモチベーションが低かったり、成長意欲がなかったりする組織のことです。
ぬるま湯組織は、安定を求めたり、他者との対立を避けたりする従業員が多く、チャレンジしない、異なる意見を発言しないなどの消極的な姿勢のため、居心地はいいかもしれませんが、組織が成長しづらい傾向があります。
一方の心理的安全性が高い組織は、相手の意見を否定しても拒絶されない、評価が下がらないという安心感があるため、従業員は積極的に意見を発言できます。従業員の成長意欲や目標達成意欲が高く、組織のことを考えた行動によって、イノベーションを起こしたり問題解決できたりするでしょう。
心理的安全性が注目されている理由
心理的安全性は、アメリカの企業「Google」が2012年から4年間行なってきた、効果的なチームに必要な条件をリサーチする「プロジェクト・アリストテレス」の結果によって、注目されるようになりました。
Googleのリサーチチームは、「誰がチームのメンバーであるかよりもチームがどのように協力しているか」が効果的なチームに重要だとし、チームメンバーの個人のパフォーマンスや仕事量は影響力が低いことを明らかにしています。
また、効果的なチームに必要な要素を重要度の高い順に並べると、下記のようになるとも公表しています。
必要な要素(重要度の高い順) | 内容 |
心理的安全性 |
自分の過ちを認めたり、質問したり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしない、罰しない、このチームなら大丈夫だと信じられる。
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相互信頼 |
クオリティの高い仕事を時間内に仕上げると信じあっている。一方で、相互信頼の低いチームは責任転嫁する。
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構造と明確さ |
職務で求められていることや遂行するためのプロセス、行動による成果について、メンバーそれぞれが理解している。
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仕事の意味 |
経済的な安定や家族の生活、チームの成功など仕事の意味は人によって異なるが、メンバーが仕事そのものや成果に対する目的意識を感じられる。
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インパクト |
メンバーそれぞれが「自分の仕事には意義がある」「いい変化を生む」と主観的に思える。
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参考:Google reWork「「効果的なチームとは何か」を知る」
心理的安全性が個人に与えるメリット
心理的安全性が個人に与えるメリットは、次の4つです。
・本来の能力を発揮しやすくなる
・ストレスが軽減する
・活発なコミュニケーションをとれる
・自分事としてとらえられる
メリットの内容を解説します。
本来の能力を発揮しやすくなる
心理的安全性が高いと、お互いに信頼し合っているという安心感によって自分の意見を積極的に出せるようになるため、本来の能力を発揮しやすくなります。
自分の力を思う存分に発揮できれば、スピーディーな目標達成によって評価を上げられたり、自己成長につながったりするでしょう。
ストレスが軽減する
自分の評価が下がることや怒られることを恐れると、言いたいことを言えずにストレスが溜まります。心理的安全性が低い組織の場合、自分らしく働けないため居心地の悪さを感じる可能性が高いです。
一方で、心理的安全性が高い組織であれば、関係に亀裂が入ることを恐れずに相手の間違いを指摘したり、自分の意見を伝えたりできるため、ストレスフリーに働けると考えられます。
活発なコミュニケーションをとれる
心理的安全性が高いと、活発なコミュニケーションをとれるメリットがあります。
お互いに意見などを伝えやすいため、トラブルを防止できたり情報共有をスムーズに行えたりするでしょう。アイデアも臆することなくチームメンバーに伝えられることで、イノベーション創出につながる可能性もあります。
自分事としてとらえられる
チームメンバーから信頼され、自分のスキルが業務やチームの役に立っていることを実感できると、責任感が芽生えたり業務への意欲が上がったりします。
責任感の醸成によって物事を自分事としてとらえられるようになるため、チームに貢献できることや業務効率化につながることなどを深く考えられるようになるでしょう。
心理的安全性が組織に与えるメリット
心理的安全性が高いと、個人のみでなく組織にもメリットがあります。
・生産性が向上する
・企業成長につながる
・従業員の離職率が低下する
心理的安全性が組織に与えるメリットを解説します。
生産性が向上する
心理的安全性が高いと、メンバーそれぞれのパフォーマンスが向上するため、結果的に組織の生産性も向上します。
生産性の向上によって、経営目標の早期達成につながるでしょう。
企業成長につながる
活発なコミュニケーションを実現できる心理的安全性が高い組織は、新たなアイデアでイノベーションを起こせたり、課題解決できたりするため、企業の成長につながります。
企業が成長し、社会的評価も高まると、働きやすい職場環境として求職者からも注目される可能性があります。多様な人材が集まれば、多角的な意見で業務を進めていけるため、さらなる企業成長が期待できるでしょう。
従業員の離職率が低下する
お互いに意見を言い合える心理的安全性が高い組織は、従業員が働きやすさを感じるため、人材が定着しやすいです。離職率が低下すると、採用コストや教育コストがかからなかったり、求職者からの評価も高まったりするでしょう。
少子化の影響で労働力が不足している日本において、心理的安全性を高めて離職率を低下させることは、人材の流出を防いだり今後の採用活動を成功させたりするためにも重要といえます。
心理的安全性が低い組織の特徴
心理的安全性が低い組織には、次の4つの不安が生じているという特徴があります。
・無知だと思われる不安
・無能だと思われる不安
・邪魔だと思われる不安
・ネガティブだと思われる不安
エイミー・エドモンドソン教授が「心理的安全性が低いと引き起こる」とした4つの不安について解説します。
無知だと思われる不安
自分の発言に対して相手に「そんなことも知らないのか」「無知だな」と思われる不安があると、わからないことや確認したいことがあっても質問できないため、ミスやトラブルを引き起こす恐れがあります。
相談もしづらくなり、ひとりで悩みを抱え、業務意欲やコミュニケーションの低下を招くでしょう。
無能だと思われる不安
ミスをした際に、周りから「仕事ができない」と思われることを恐れると、ミスを隠したり、他者のせいにしたりするケースがあります。ミスを隠すとのちに大きなトラブルの発生を招くかもしれません。また、責任転嫁によって、周りからの信頼を失うことも考えられるでしょう。
ミスを避けるために新たな挑戦もできなくなって、自己成長やイノベーション創出の機会も減ってしまいます。
邪魔だと思われる不安
会議や打ち合わせ中に自分が発言することで、相手に「議論の邪魔をされた」と思われるのではないかと不安を感じた場合、発言を控えるようになります。
意見を言い合うことがなくなるため、課題解決ができなかったり、メンバー間の考えや認識が揃わなかったりする恐れがあります。
ネガティブだと思われる不安
相手の意見に対し反対意見を伝えることで、「否定ばかりする」などとネガティブに思われる不安が生じた場合、誤っている、ほかにいいやり方があると思っていても発言を控えてしまうでしょう。
意見を言わないとチームで最善策を生み出すことができなくなるため、目標達成できなかったり、成長につながらなかったりします。
心理的安全性のレベルを確認する方法
エイミー・エドモンドソン教授は、チームの心理的安全性のレベルを確認する際に7つの質問をするそうです。
チームの心理的安全性がどの程度かを把握するには、次の7つの質問をチェックリストにし、メンバーに回答してもらうといいでしょう。5段階回答など、数値で回答してもらえると点数化できるため、より判断しやすくなります。
①チームの中でミスをすると、だいたい非難される
②チームのメンバーは、お互いに課題や難しい問題を指摘し合える
③チームのメンバーは、「自分と異なる」ことを理由に他者を拒絶することがある
④チームに対してリスクのある行動をしても安全だと感じられる
⑤チームのメンバーに助けを求めにくい
⑥チームのメンバーは誰も、自分の仕事を意図的に貶める行動をしない
⑦チームで仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる
参考:Google reWork「「効果的なチームとは何か」を知る」
心理的安全性を高める6つの方法
下記の6つの方法を試すと、心理的安全性を高められる可能性があります。
・メンバー間の信頼関係を築く
・発言の機会が偏らないようにする
・相談しやすい職場環境を作る
・リーダーが意欲的な姿勢を見せる
・サポート体制を整備する
・発言の目的の認識を一致させる
方法を具体的に解説します。
メンバー間の信頼関係を築く
お互いのことをよく知らなかったり、発言することに慣れていなかったりすると、意見やアイデを口にしにくいかもしれません。
そのため、メンバー間の信頼関係を築くために、1on1ミーティングや勉強会、食事会などを開き、お互いのことを知ったり発言したりする機会を作りましょう。
お互いの理解が深まり、発言に対するハードルが下がると、コミュニケーションが活発になる可能性があります。
発言の機会が偏らないようにする
会議などでは、特定の人ばかりが発言して、メンバー全員の意見を聞けないケースがあります。
メンバー全員に自分事だととらえてもらったり、多角的な意見を求めたりするために、発言していない人に意見を促すなど、進行方法を工夫し、発言の機会が偏らないようにしましょう。
相談しやすい職場環境を作る
相談しやすい職場環境が構築できていると、悩みや不安を抱えた際にすぐにメンバーに打ち明けられるため、働きやすさを感じたり、意欲的に業務へ取り組めたりします。
相談すると親身に話を聞いてくれる、真剣に向き合ってくれるという環境は、心理的安全性を高めるでしょう。
リーダーが意欲的な姿勢を見せる
チームリーダーが意欲的な姿勢を見せると、メンバーも「発言していいんだ」「失敗していいんだ」と思えるため、心理的安全性を高められます。
例えば、リーダーが否定や批判を恐れずに発言したり、メンバーへ密なコミュニケーションをとったりすると、メンバーも意見を言いやすくなります。また、失敗を恐れずに挑戦する姿勢を示すと、メンバーにも挑戦意欲が湧いて、成長につながるでしょう。
サポート体制を整備する
せっかく意見を言っても、何もフィードバックがないと発言する気がなくなってしまうかもしれません。活発に意見を言い合えるように、お互いの意見にフィードバックしたり、声を掛け合ったりなどのサポート体制を整備しましょう。
コミュニケーションが活発になると、ミスやトラブルの情報共有もスムーズになり、迅速な対処が可能です。
発言の目的の認識を一致させる
「なぜ発言するのか」「なんのために意見を言うのか」という目的の認識を一致させると、心理的安全性を高められるでしょう。
例えば「事業を成長させるため」「さらによいサービスを顧客に届けるため」のような目的の認識をメンバー間で合わせておけば、どのような意見も目的のためとして受け入れやすくなったり、活発に発言できたりすると考えられます。
心理的安全性を高めて意欲的に働こう!
心理的安全性が高まると、メンバーの一人ひとりが能力を発揮しやすくなったりストレスを軽減できたりするメリットがあります。また、活発なコミュニケーションによって、ミスやトラブルの防止やイノベーション創出も期待できます。
「ぬるま湯組織」や「仲良し組織」にならないように、心理的安全性の意味をよく理解し、チームの目的や目標に向かって緊張感を持ちながら仕事をしていきましょう。
記事執筆や校正など文字に関わる仕事を幅広く行う元金融業のフリーライター。静岡県在住だけど岐阜県も大好き。戦国武将の推しは斎藤道三。(ブログ:https://enmojilaboblog.com/)