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投稿者:

ZYAO22編集部

健康リスクが高いのは「運輸業・郵便業」、「医療・福祉」、「宿泊業・飲食サービス業」

2024年度ストレスチェック全業種データ分析レポート

2025年9月2日
株式会社ドクタートラスト
https://doctor-trust.co.jp/

 株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した7,779団体、累計受検者267万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。

 今回は2024年度にストレスチェックを受検したおよそ56万人(1,777の企業・団体)における集団分析データをもとに、ストレスの推移や健康リスクなどを調査しました。

 

YouTubeで解説動画公開中

2024年度】ストレスチェックの業種別分析

 

調査結果のポイント

<総合健康リスク>

・ 総合健康リスクが高い業種:「運輸業・郵便業」、「医療・福祉」、「宿泊業・飲食サービス業」

・ 総合健康リスクが低い業種:「不動産業・物品賃貸業」、「公務」、「情報通信業」

<高ストレス者>

・ 高ストレス者が多い業種:「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」

・ 高ストレス者が少ない業種:「公務」、「分類不能の産業」、「学術研究・専門技術サービス業」

 

以下では、調査結果について、要点をまとめた「要点解説編」と、詳しく説明した「詳細解説編」に分けてご紹介します。

 

要点解説編

 

1. 健康リスクが高いのは「運輸業・郵便業」、「医療・福祉」、「宿泊業・飲食サービス業」

 

図1

 

 ストレスチェックの結果を部署や事業場ごとに分析した集団分析では、病気やメンタルヘルス不調など健康への悪影響を及ぼすリスク「健康リスク」が示されます。これは「仕事の負担・コントロール」リスク、および「上司・同僚からのサポート」リスクという 2つの指標をかけ合わせた数値です。

 図1のとおり、2024年度のストレスチェックの結果、健康リスクが高かった業種は「運輸業・郵便業」、「医療・福祉」、「宿泊業・飲食サービス業」でした。勤務形態(交代制やシフト勤務など)によって生活リズムが不規則になりやすくなることや業務上、人と接する機会の頻度によって心身ともにストレスを感じているのではないかと考えます。

 一方、健康リスクが低かった業種は、「不動産業・物品賃貸業」、「公務」、「情報通信業」でした。

 

2. 高ストレス者が多い業種は「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」

 図2は、高ストレス者率を業種ごとに算出したもので、高ストレス者率が高い順に示しています。高ストレス者率が高い業種は「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、以下「運輸業・郵便業」と続きます。

 一方で高ストレス者率が低かった業種は、「公務」、「分類不能の産業」、「学術研究・専門技術サービス業」でした。

 

図2

 

詳細解説編

はじめに

 ストレスチェック制度は、2015年以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が法律で義務づけられています。ドクタートラストでは制度開始から9年間にわたり、全国官公庁・事業団体など各組織に応じたストレスチェックを提供してまいりました。現在では通常の57項目版とあわせて、より詳細な解析が可能である80項目版や独自の設問をご用意しています。また、集団分析結果のフィードバックや受検後相談窓口などのアフターフォローも提供しており、国内トップクラスの受検者数を誇っています。

 今回の調査では、2024年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した1,777団体、およそ56万人の最新結果を業種別に分析しました。

 

総合健康リスク

 ストレスチェックの結果を部署や、事業場ごとに分析した集団分析では、集団の「総合健康リスク」が示されます。

 

<総合健康リスクとは>

・ 企業や団体の中で仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題のリスクを示す指標。標準集団の平均を「100」としており、健康リスクが「120」の集団は、その集団で健康問題が起きる可能性が、平均より「20%多い」ことを示す

・ 総合健康リスクは、「上司・同僚からのサポート」リスクおよび「仕事の負担・コントロール」リスクという2つの指標をかけ合わせた数値

 

 総合健康リスクを業種別に算出、リスクの低いものから順に並べたものが「図3 業種別・総合健康リスクランキング」です。

 総合健康リスクが高い業種は「運輸業・郵便業」、「医療・福祉」、「宿泊業・飲食サービス業」、一方で総合健康リスクが低い業種は「不動産業・物品賃貸業」、「公務」、「情報通信業」でした。

 

図3

 

業種別・リスクランキング

 前述のとおり、総合健康リスクは、「仕事の負担・コントロール」リスク、および「上司・同僚からのサポート」リスクという 2つの指標をかけ合わせた数値から算出されます。図4は業種別に「仕事の量・コントロール」リスク、「上司・同僚からのサポート」リスクを示したものです。

 

図4

 

1. 「仕事の負担・コントロール」で健康リスクが最も高いのは「宿泊業・飲食サービス業」、次いで「生活関連サービス業・娯楽業」、「医療・福祉」

 総合健康リスクを算出する1つ目の指標「仕事の負担・コントロール」リスクは、 個人ごとの仕事量の負担と、仕事量をいかにコントロールできているか、そのバランスがストレスに及ぼす影響を示しています。

 このうち「仕事の負担」リスクは、仕事の量・処理速度・熱量などを問う設問、「仕事のコントロール」リスクは、仕事をする際に自分の裁量で業務内容や進め方、時間配分などを調整できるか、その自由度を

問う設問から構成されています。

 「仕事の負担・コントロール」で健康リスクが最も高かったのは、図4のとおり「宿泊業・飲食サービス業」、次いで「生活関連サービス業・娯楽業」、「医療・福祉」でした。

 

2. 「上司・同僚からのサポート」で健康リスクが最も高いのは「運輸業・郵便業」、次いで「製造業」、「サービス業」

 総合健康リスクを算出する2つ目の指標「上司・同僚からのサポート」リスクとは、職場の上司や同僚とのコミュニケーションがストレスに及ぼす影響を示しています。

 

<「上司・同僚からのサポートリスク」の特徴>

・ 仕事量が多く、裁量権が少ない職場であっても上司や同僚からのサポートが得やすい職場はリスク数値が良好傾向になる

・ 逆に仕事量が少なく、自分のやり方で仕事を進められても、上司や同僚からのサポートが得られにくい職場はリスク数値が不良傾向になる

 

 上司・同僚からのサポートが不十分な職場は、従業員のメンタルヘルス悪化や生産性の低下、離職率の上昇にもつながる可能性があるため注意が必要です。

 「上司・同僚からのサポート」においてもっとも不良だったのは図4のとおり「運輸業・郵便業」、2位は「製造業」でした。

 「運輸業・郵便業」、「製造業」は他の業種とくらべて業務を一人で行うケースが多いため周囲とのつながりを感じにくい、拠点が複数あり管理職と物理的な距離があるなどの特性から、サポートの有無が従業員のストレスに影響を与えている可能性があります。「相談しやすい職場づくり」は社員の定着率向上やメンタル不調の予防のためにも不可欠です。そのためにも現在のサポート状況を見直し、対策を検討することが求められるでしょう。

 

高ストレス者率ランキング

1. 高ストレス者率が高いのは、「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」

 高ストレス者率とは、実際に受検をした人のなかで、高ストレス者と判定された人がどれくらいいるかを示した割合です。2024年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した企業・団体の高ストレス者率の平均は13.6%(受検者数555,956人より算出)でした。

 

<高ストレス者とは>

・ ストレスの自覚症状が強い人

・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人

 

図5

 

 図5は、高ストレス者率を業種ごとに算出したもので、高ストレス者率が高い順に示しています。高ストレス者率が高い業種は「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、以下「運輸業・郵便業」と続きます。

 一方で高ストレス者率が低かった業種は、「公務」、「分類不能の産業」、「学術研究・専門技術サービス業」でした。

 

2. 2年連続で高ストレス者率が高い業種は「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」

 

図6

※受検者数が一定に満たない業種は除外しています

 

 さらに図6は、業種別に2023年度と2024年度の高ストレス者率を比較したものです。

 2年連続で高ストレス者率が高い傾向にあったのは「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」だったことがわかります。この背景には、不規則勤務(早朝・夜勤業務など)や対人ストレスが考えられます。

 「宿泊業・飲食サービス業」、「運輸業・郵便業」、「卸売業・小売業」などは昨年度より高ストレス者率が減少しましたが、全国平均よりも数値が高いため自社の課題や状況に合わせた対応をしていくことが必要とされるでしょう。

 

3. 5年前とくらべて9割の業種で高ストレス者率が改善傾向

 

図7

※受検者数が一定に満たない業種は除外しています

 

 図7は、2024年度と5年前(2019年度)の高ストレス者率を業種別に算出したものです。5年間で高ストレス者率が増加したのは全15業種中1業種(宿泊業・飲食サービス業)、減少した業種は14業種でした。

 

4. 5年前から高ストレス者率が増えた業種は「宿泊業・飲食サービス業」

 

図8

 

 図8は5年前にくらべて唯一高ストレス者率の増加した「宿泊業・飲食サービス業」における高ストレス者率の推移です。

 2019年の「宿泊業・飲食サービス業」の高ストレス者率は14.1%、2024年は19.3%でした。高ストレス者率は2023年度よりは減少しているものの、5年前(2019年度)からくらべると5.2%増えていることがわかりました。

 厚生労働省が公表している産業別・企業規模別にみた雇用人員判断D.I.の推移(※)によると、「宿泊・飲食サービス」における人手不足感は他の業種にくらべて強まっていることがわかっています。

 背景にはコロナ後のインバウンド景気による需要回復と人材確保のギャップが大きく、1人あたりの業務負荷がストレスに影響を与えているのではないかと推察します。社会情勢や業種特性によってどうしてもストレスの偏りが出やすい業種がありますが、働きやすい職場づくりを構築していくためには働き方・業務分担の見直しや職場のコミュニケーション強化などそれぞれの職場の特性に合わせたケアをしていくことが求められるでしょう。

 一方で、特に改善した3業種(情報通信業、生活関連サービス・娯楽業、金融・保険業)ではコロナ禍を機にテレワークによる柔軟な働き方になったこと、業務のオンライン化やAIの発展が身体的・精神的な負荷を軽減させた可能性があります。

※厚生労働省「令和6年版労働経済の分析─人手不足への対応─」

 

さいごに

 以上のように、総合健康リスクが最も高かったのは、「運輸業・郵便業」でした。ただ、2023年度の同調査では総合健康リスクが106であったのに対して、2024年度は104にまで改善されました。厚生労働省が公表している改善基準告示(※)では2024年4月から、自動車運転の業務にも「年960時間」の時間外労働の上限が適用されました。そのため長時間労働による離職率上昇を引き留める施策として従業員へのサポート体制が強化された結果が表れているのではないかと考えます。

 また、「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」は高ストレス者率、健康リスクともに高い業種でした。これらは従業員の心身へのストレスを緩和するための対策を講じることが望まれるでしょう。

 さらに新型コロナウイルス感染症が確認された5年前(2019年度)とくらべると約9割の業種で高ストレス者が減少し「宿泊業・飲食サービス業」のみ高ストレス者が増えた結果になりました。

 この背景には、健康経営優良法人の取得企業数が年々増加しているなど企業が従業員の健康管理に対しての意識が高まっていることが考えられます。コロナ禍以降、社会全体での安全・健康に対する意識や仕事の柔軟性が変わってきました。その影響が業種ごとのストレス傾向に顕著に表れていることも今回の結果でわかりました。

 業種ごとのストレス状況は法律改正や社会情勢によって職場環境や従業員の心身のストレス負担が変化するため経年で変わっていきます。そのため企業として自社の業種特性に加えて社内状況や課題に合わせて最適な対応をしていきましょう。

※厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」

文責:押切愛里(ストレスチェック研究所 アナリスト)

 

調査対象

調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2019~2024年度受検者

対象受検者数:

2024年度 555,956人(1,777の企業・団体)

2023年度 479,612人(1,390の企業・団体)

2022年度 410,352人(1,162の企業・団体)

2021年度 324,642人(940の企業・団体)

2020年度 240,275人(685の企業・団体)

2019年度 199,290人(575の企業・団体)

※本件の業種分類は「日本標準産業分類」に準拠しています。受検法人数が一定数に満たない業種は評価していません

※複合サービス事業は2019年度の実施企業が⼀定数を満たないため、表示していません

 

ドクタートラスト概要

株式会社ドクタートラスト https://doctor-trust.co.jp/

株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦)は企業ではたらく人の健康管理を専門に受託している会社です。産業医(国内トップクラス)や保健師などの医療資格者が企業を訪問の上、健康診断結果に基づく健康指導、過重労働者面談を行います。また、267万人超のビッグデータに基づく職場環境改善コンサル「STELLA」や、 外部相談窓口サービス[アンリ]、健康管理システム「エール+」もご好評いただいております。その他 ストレスチェック、健康経営セミナー、 衛生委員会のアドバイスなど、さまざまな業務を実施します。

 

ストレスチェック研究所 https://www.stresscheck-dt.jp/consultant/

ストレスチェック研究所は、ドクタートラスト内に設置された研究機関です。ストレスチェックで得られた膨大なデータの分析を行うとともに、ストレス耐性が高く組織の強みである人材を「STELLA(ステラ)」と名づけ、これら人材を活用した強固な組織作りを目指す職場環境改善コンサル業務を行っています。

 

ストレスチェックサービスに関するお問合せ

株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所 担当:杉山、上田

TEL:03-3464-4000(代表)

特設サイト:https://www.stresscheck-dt.jp/

企業さま用お問合せフォーム:https://www.stresscheck-dt.jp/sc_form_document/