東京都と無花粉スギの生産事業化に向けて協定 ~組織培養による大量増殖技術で花粉症対策~
2024年8月8日
住友林業
住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)は7月23日に東京都と「無花粉スギの生産事業化に向けた協定書」を締結しました。国立研究開発法人森林総合研究所や新潟大学などが開発した無花粉スギの苗木の量産技術※1を参考に組織培養で無花粉スギを増殖します。従来の挿し木や種をまいて育てる増殖法と比べ高効率に無花粉スギを増殖する技術を実用化し、無花粉スギの苗木生産の事業化を目指します。
※1. 参考リリース:無花粉スギの苗木だけを量産する革新的技術を開発―DNA鑑定と組織培養で花粉症対策に貢献―https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2022/20220228/index.html
■協定の概要
東京都が育てた無花粉スギの球果
・東京都から無花粉スギの球果の提供を受け、当社は事業計画をもとに培養技術による苗木の増殖、都内の生産事業者と協力した苗木の育成・生産、植栽試験を行う。
・期間は締結日から2027年3月31日まで。両者の継続希望があれば延長可能。
・増殖した苗木は都内の事業者に優先して販売する。体制を構築し、植林する無花粉スギ苗木の生産目標は年間10万本。
■背景と経緯
【背景】
現在、日本の森林は戦後に植林したスギやヒノキの人工林が伐採適齢期を迎えています。スギやヒノキなどの花粉により引き起こされるアレルギー疾患である花粉症は国民の4割程度が発症しています。林野庁を中心にスギ人工林を伐採し、花粉の少ない木に植え替え、森林を循環させる花粉症発生源対策※2に取り組んでいます。
総面積の約4割が森林の東京都では都民の5割程度が花粉症であると推定されています。東京都は「花粉の少ない森づくり※3」で人工林を伐採して花粉の少ないスギなどに植え替え、森を循環することで木材の安定供給と林業の活性化を推進しています。2024年4月、東京都は花粉発生源対策で無花粉スギの穂や球果を用いた増殖・育成技術を持つ協力事業者を募集。当社はこれに応募し、選定されました。
※2. 林野庁HP:https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/
※3. 東京都「花粉の少ない森づくり」HP:https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/ringyou/promotion/kafun/
【経緯】
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」で住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林の CO2 吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、社会全体の脱炭素化を目指しています。
人工林を伐採し、花粉の少ないスギに植え替え、森林の循環を促進することは当社の長期ビジョン「Mission TREEING 2030」の実現につながります。東京都の「無花粉スギの生産事業化」の実現や社会が抱える「花粉症」の課題解決にも貢献できると判断し、今回の協定へと至りました。
■今後の展開
当社は東京都が研究を続けてきた無花粉スギの遺伝資源を受け取り、その増殖や育成・生産手法を確立して都内の苗木生産事業者に技術を提供します。2026年春に試験植栽し、無花粉であるかや成長性、一定期間成長後には材質等も含め確認する計画です。今後東京都や都内の苗木生産業者と連携して年間10万本以上の苗木を生産する体制を構築し2030年ごろに本格的な無花粉スギ苗木の生産事業化を目指します。
(参考情報)
■住友林業/育苗センターについて
全国6か所(北海道、福島県、群馬県、岐阜県、高知県、宮崎県)に樹木育苗センターを配置しています。
スギやカラマツ、ヒノキなどの苗木を年間190万本生産しています。
(参考HP:https://sfc.jp/treecycle/value/container_seedling.html)
■住友林業/筑波研究所 組織培養による苗木増殖について
住友林業ではこれまでに様々な神社仏閣や自治体が管理する名木や貴重木の後継樹を育成するため、組織培養・接ぎ木・種子により苗を増殖する技術を確立してきました※4。
※4. 組織培養による苗木増殖https://sfc.jp/treecycle/value/naegi_zousyoku.html
(参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=sj-_kCX3yUw)