第42回「中堅企業経営者意識調査」~世界28カ国同時調査~を発表
日本の景況感は前回調査比35ポイント増の52%と大幅上昇。自国での過去最高水準を記録し初の50%の大台を記録
2023年11月7日
太陽グラントソントンhttps://www.grantthornton.jp/
太陽グラントソントンは、 非上場企業を中心とする中堅企業の経営者に対して今後の自国経済の見通しや自社の経営状況などに関して調査した中堅企業経営者意識調査(上半期版・2023年5月~6月実施分)の結果を公表した。この調査は、グラントソントン主要加盟国が年に2回実施する世界同時調査の一環である。
・世界28カ国の平均景況感は前回調査比8ポイント増の67%、上昇傾向をみせる
・日本の景況感も大幅に上昇し前回調査比35ポイント増の52 %、初の50%台を記録
・調査対象国の中堅企業経営者の投資意向は過去最高水準に到達
世界28カ国の中堅企業経営者に対して行った今後一年の自国経済と自社の経営状況の見通しに関する調査で、世界の景況感が上昇傾向にあることがわかった。調査対象国平均の景況感は、前回調査(2022年10月~12月実施分)比で8ポイント増の67%という結果であった。地域ごとでは、欧州・中東・アフリカ地域が(56%)とアジア太平洋地域(67%)が、それぞれ前回調査比10ポイント以上の顕著な伸びをみせた。北米は引き続き高い水準を維持し(74%、前回調査比3ポイント増)、全体の景況感を押し上げた。日本の景況感は、前回調査比35ポイント増の52%と大幅に上昇し、自国での過去最高水準を記録して初の50%の大台にのった。
今回の日本および調査対象国平均における景況感の大幅な回復には、収益性の増加(日本:45%、前回調査比13ポイント増、調査対象国平均: 59% 、前回調査比4ポイント増)、販売価格の増加(日本:45%、前回調査比7ポイント増、調査対象国平均: 55%、前回調査比4ポイント増)、輸出量の増加(日本:32%、前回調査比17ポイント増、調査対象国平均:47%、2ポイント増)を期待する中堅企業経営者が多かった点が背景にあるとみられる。なお、日本の収益性は、直近で最も低い水準を記録した2020年上半期調査の11%から上昇し続け、今回の結果では前回調査比13ポイント増と、飛躍的な回復をみせた。
収益性の増加が期待されている点については、今後一年の間に輸出量の増加を見込んでいる経営者が過去最多を記録したことが関連しているとみられる(日本:32%、前回調査比17ポイント増、調査対象国平均: 47%、前回調査比2ポイント増)。また、国外市場からの収益の増加を見込む企業も増し、(日本:34%、前回調査比13ポイント増、調査対象国平均: 44%、前回調査比4ポイント増)、販売先国数の増加を見込む企業も増した(日本:29%、前回調査比16ポイント増、調査対象国平均: 43%、前回調査比2ポイント増)。調査対象国平均および日本ともに、これらの分野での増加を見込む中堅企業経営者の数は、これまでの本調査結果のうち最高水準であった。
また、世界各国が高いインフレ率に到達していたのに対し、日本は安定したインフレ率で推移していたため、日本製品は相対的な価格競争力を持ち、大幅な円安は輸出企業の収益性を向上させた。原油、農産物などの海外資源価格の高騰が商社等の収益にプラスに寄与し、調達コストの商品・サービス価格への転嫁が進むなど、依然として厳しい収益状況にある企業はあるものの、全体としては、収益環境は改善傾向にあると言える。
今回の調査ではまた、中堅企業における過去最高水準の投資意欲がみられた。調査対象国平均では、これまでの本調査結果のうち過去最高レベルとなる61%の中堅企業経営者が、今後一年の間にテクノロジーへの投資を計画していると回答した(日本:49%、前回調査比3ポイント増)。日本では従業員のスキルアップへの投資をあげる企業が最も多かった(日本:53%、前回調査比10ポイント増、調査対象国平均:57%、前回調査比4ポイント増)。
そのほかの項目では、研究開発への投資(日本:37%、前回調査比13ポイント増、調査対象国平均:54%、前回調査比3ポイント増)、工場・機械などの設備投資(日本:36%、前回調査比12ポイント増、調査対象国平均:44%、前回調査比2ポイント増) 、新しいオフィスやテナントへの投資(日本:27%、前回調査比6ポイント増、調査対象国平均:38%、前回調査比2ポイント増)などと、特に日本における二桁ポイントでの増加が顕著であり、あらゆる分野への投資に前向きであることが分かった。
対照的に、今後自社の経営に対して制約となりうる事項について尋ねたところ、多くの中堅企業経営者が、経済情勢の不確実性が自社の経営に影響を及ぼすと指摘していることが分かった(日本:41%、前回調査比11ポイント減、調査対象国平均:58%、前回調査比2ポイント減) 。この制約要因を指摘する中堅企業の数は減少傾向にあるものの、コロナ禍前の水準と比較すると、依然として大きく上回っている 。
また一方で、エネルギーコストを経営上の制約要因とみる中堅企業の数も減少傾向にあることが分かった(日本:48%、前回調査比6ポイント減、調査対象国平均: 54%、前回調査比6ポイント減)。これまでに引き続き、約半数程度の中堅企業経営者が、即戦力の確保への懸念を示した(日本:49%、前回調査比5ポイント減、調査対象国平均:53%、前回調査比4ポイント減) 。
今回の調査結果について、太陽グラントソントングループ パートナー公認会計士の竹村光広は次のように述べている。
「パンデミック収束を経て経済が正常化に向かうにつれ、日本の中堅企業経営者の見通しは明るさを増しつつある。必ずしも全産業で経営が改善の方向に向かっているとは言えないが、製造業では内外金利差などによる円安、非製造業ではインバウンド需要の回復が利益を押し上げたことが、景況感の回復に寄与しているとみられる。
また、商品やサービスの価格が上昇しており、原材料費や人件費の上昇分をある程度カバーできるようになったことも、経営者の前向きな姿勢を強めており、先を見据えた経営戦略の展開につながっている。長期にわたるデフレの定着で商品やサービスの値上げが難しかった日本経済は、転換期を迎えていると言えるであろう。
他方、海外諸国における金利上昇により外需が減少するリスクがあるほか、海外金利のピークアウト及び日本の金融緩和政策の修正の可能性により内外金利差が縮小に向かい、為替レートの円安も転機を迎える可能性があることから中堅企業をとりまくこれらの経済動向には注視が必要だ。」