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投稿者:

ZYAO22編集部

日本盲導犬協会が事業従事者の認識を初調査~盲導犬ユーザーを「受け入れる」意思を持つ人は半数にとどまる

2024年12月9日
公益財団法人 日本盲導犬協会



 2023年、公益財団法人日本盲導犬協会(理事長:金髙雅仁)が、盲導犬使用者(以下、ユーザー)237人を対象に実施したアンケートにおいて、この1年間での「盲導犬同伴での受け入れ拒否の有無」について聞いたところ、「受け入れ拒否にあった」と回答したユーザーが103人、延べ208件の拒否が発生していることがわかりました。具体的な発生場所としては、飲食店が最多で、次いで交通機関、宿泊施設と続き、多くのユーザーが活動の制限を受けている現状があります。 
 こうした受け入れ拒否の原因を探るため、日本盲導犬協会では、2024年8月に、事業所で働く従業員を対象にした『盲導犬および視覚障害に関する意識調査』を実施しました。法律の認知度、受け入れへの意識、視覚障害に対する認識などを聞く中で、受け入れ拒否につながる要因も見えてきました。 
本報告では、47項目に及ぶアンケート結果の中から、データを抜粋して報告します。

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【調査概要】
・調査名:盲導犬および視覚障害に関する意識調査 
・調査対象:下記のいずれかの業種に従事する全国の20~79歳の男女 
飲食業/宿泊業/医療業/小売業/不動産賃貸業/生活関連サービス・娯楽業/交通機関(タクシー、バス、鉄道/その他) 
・地域:47都道府県 
・調査方法:インターネット(オンライン)調査 
・スクリーニング調査 有効回答数:約15,000人 
・本調査 有効回答数:975人 
※全国15,000人にスクリーニング調査を行い、うち975人分の回答を有効回答として分析。
※各業種一定のサンプル数を確保するため、均等回収に近い形で回収を実施。 
・質問内容:アンケート47項目 
・回収期間:2024年8月28日~9月2日 
・実施機関:株式会社Quest Research 
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結果1.法律の認識不足で盲導犬受け入れに不安の声、7割が法律を知らず4割が受け入れを躊躇 

 2002年5月に成立した身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)では、障害者の自立と社会参加を促進するために、不特定多数の人が利用する施設、乗り物において、盲導犬同伴での利用を受け入れることが義務付けられています。そこで補助犬法の認知を聞いてみたところ、全体の66.9%が「補助犬法の存在を知らない」と回答しました。「補助犬法の存在を知っており、法律の内容もほぼ理解している」という回答は、交通機関(鉄道)を除きすべての業種で1割を下回りました。(図1) 

 また、盲導犬同伴での利用を拒否することは、障害者差別解消法(以下、差別解消法)における、「障害を理由とする差別的取り扱い」に該当し禁止されていますが、差別解消法の認知についても、全体の70.5%が「差別解消法を知らない」と回答しました。「差別解消法の存在を知っており、法律の内容をほぼ理解している」という回答は、補助犬法同様どの業種も1割を下回り、いずれの法律も認知が進んでいないことが明らかになりました。(図2) 

 さらに、受け入れに対する意識について聞いたところ、補助犬法で盲導犬同伴での利用が義務付けられていることについて、全体の77.5%が「賛成」と回答し、いずれの業種も「賛成」の回答が7割を上回りました。(図3) 

 「盲導犬同伴での利用を拒むことが、不当な差別的取扱いに該当すると思うか」という質問でも、全体の68.5%が差別に「該当する」と回答し、小売業を除く業種で6割を上回りました。(図4)  

 しかし、今後ユーザーの利用を受け入れるかを聞いてみたところ、「受け入れる」という回答は全体の52.6%にとどまり、6.7%が「受け入れない」、40.7%が「どちらとも言えない」と回答しました。飲食業、医療業、小売業、不動産賃貸業、生活関連サービス・娯楽業の5業種で「受け入れる」の回答が5割を下回り、「受け入れる」の割合がもっと高かった交通機関(鉄道)でも65.9%にとどまりました。(図5)

 

考察1

 法律の認知度が低くとどまる中で、盲導犬同伴での利用には回答者の多くが賛同し、受け入れ拒否は「差別に該当する」と認識していました。その一方で、実際に受け入れる意思を持つ人は約半数にとどまり、理解はしているものの躊躇している様子がうかがえます。受け入れる意思が半数にとどまる要因はなにか?この要因を紐解くことが受け入れ拒否の解消につながると考えます。 

 

結果2.盲導犬受け入れが進まない背景に、知識不足が影響しているか 

 盲導犬同伴での入店、入場を「受け入れない」とする背景に何があるのかを探るため、盲導犬に対するイメージについて具体的に聞いてみました。

 「盲導犬が入ることは不衛生だ」、「邪魔だ」、「周りのお客様に迷惑だ」で、飲食業の「とてもそう思う/ややそう思う」の回答がそれぞれ25~29%と最も多く、「盲導犬が座っていたり待機したりしていた場所が汚れる」は、生活関連サービス・娯楽業の16.3%、「畳や床を傷つける」は、宿泊業の18.1%が最も多い結果となりました。(図6-1,2,3,4,5)




 盲導犬が自分の隣にいたらどう思うかの自由回答においても、「食品を扱っているので心配」「噛んだり吠えたりされるのではないかと不安」「アレルギーの人に迷惑がかかると思う」という回答があり、業種別に差はあるものの、盲導犬を受け入れることに対して、何かしらの不安を抱いていることがうかがえました。
ユーザーは、訓練でブラッシングやシャンプーなどの犬の衛生管理のスキルを習得し、排泄を含む行動管理を適切に行っています。しかし、ユーザーに、犬を管理する義務があることを知らない人は全体の74.7にのぼりました。(図7)

 

考察2

 盲導犬に対して「施設を汚す」「他のお客様の邪魔になる」など負のイメージや不安を抱いている人が一定数いることがうかがえます。その結果、盲導犬同伴での利用を受け入れると施設や利用者に悪影響を及ぼすと懸念し、受け入れに消極的になっていることが推測されます。そうした負のイメージや不安を払しょくするために、犬に対するユーザーの管理義務やそのスキルを理解してもらうことが必要です。
さらには、実際に受け入れがスムースにいったケースや、同業者の事例を伝えることで、具体的な対応をイメージできるようになり、受け入れに対する不安を軽減できるのではないかと考えます。 

 

結果3. 視覚障害者への接客にも高いハードルが 

 今年4月の改正障害者差別解消法の施行により、民間事業者における合理的配慮の提供が「努力義務」から「義務」へ変わりました。ユーザーをはじめとする視覚障害者が社会参加をする上で生じる「障壁(バリア)」を取り除くために、「見えない・見えにくい」ことに対する正しい理解がより一層求められる中、視覚障害者をどのようにとらえているか詳しく聞いてみました。 

 まずは、視覚障害者に対する認識に関して、「視覚障害者の見えにくさが人により異なることを知っているか」を聞いたところ、全体の65.6%が「知っている」と回答しました。(図8)

 「視覚障害者全員が点字を読めるわけではない、ということを知っているか」を聞いたところ、全体の51.1%が「知っている」と回答しました。 (図9)

 また、盲導犬ユーザーや視覚障害者への「接客」について、「誘導(席や目的地などへ)」に対して懸念を抱いている回答者は、小売業が35.3%と最も高く、生活関連サービス・娯楽業が31.8%と続きました。(図10-1)

 「情報提供(商品・サービスの説明など)」に対して懸念を抱いている回答者は、生活関連サービス・娯楽業が35.5と最も高く、小売業が33.6%と続き、「コミュニケーション」に対する懸念も同様に、生活関連サービス・娯楽業が31.8と最も高く、不動産賃貸業が28.8%と続きました。(図10-2,3)

 
 「勤め先が視覚障害のお客様が利用しやすい場所だと思いますか」という質問では、全体の68.7%が「利用しやすいと思わない」と回答しました。(図11)

 その理由としては、「段差が多い」「バリアフリーではない」「売り場の通路に物が多く置かれている」といった誘導への懸念と思われる意見や、「目が見えることを前提としたポップや説明書を使用している」「商品の販売が券売機で視覚障害者対応でないため」といった情報提供への懸念が多く見られました。
 「そもそも視覚障害者が利用したことがない」という回答もあり、実際にユーザーが施設を利用したことがあるかを聞いてみたところ、全体の81.7%が「ユーザーの利用経験がない」と回答しました。「ユーザーの利用経験がある」と回答した人を業種別で見てみると、交通機関(鉄道)が最も高く56.1%、次いで交通機関(タクシー)の32.4%、交通機関(バス)の30.0%と続きました。(図12)

 

考察3

 視覚障害者に接する機会の少なさ、それに伴う自身の接客スキルへの不安、さらには、職場の広さや設備といった環境面の課題も加わって、一定数の人が、視覚障害者への接客に対して高いハードルを感じていることがわかりました。視覚障害への理解を深める機会、誘導方法などのスキルを習得する機会があれば、不安の軽減につながるのではないかと考えます。 

 

まとめ 

 今回の調査結果から、盲導犬同伴の視覚障害者を拒否してしまう要因として、法律が十分に認知されていないことや、盲導犬に対する負のイメージが一定数存在することが明らかになりました。
さらには、視覚障害者への接客対応についても、知識や経験の不足から生じる不安があることが見えてきました。「そういったお客様への接客の仕方について、会社としてのマニュアルがない」、「対象のお客様に対する社員教育がない」といった意見もあり、現場の従業員が不安を抱えたまま自己判断で対応せざるを得ない現状があるのかもしれません。 
 これらの不安を解消するために、盲導犬や視覚障害に関する正しい情報を、受け入れ事業者の従業員にまで届けることが急務です。今後も日本盲導犬協会では、様々な形の広報活動を展開し、より広く、多くの人に情報を発信していきます。 

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 日本盲導犬協会では、事業者への理解促進のための取り組みを拡充すべく、「盲導犬ユーザー受け入れ・接客セミナー」のオンデマンド配信をはじめました。セミナー動画は、当協会YouTubeチャンネルにて限定配信しています。
盲導犬ユーザー受け入れ・接客セミナー(基礎編) 
内容:盲導犬・視覚障害について、身体障害者補助犬法と盲導犬ユーザーの受け入れについて 
盲導犬ユーザー受け入れ・接客セミナー(応用編) 
内容:障害者差別解消法について、盲導犬ユーザー・視覚障害者への接客・誘導の具体例の紹介 
※応用編は業種別(商業施設・小売店、医療機関、宿泊施設、タクシー)に動画があります。 

視聴をご希望の場合は、以下HPの申込フォームより、お問い合わせください。
https://www.moudouken.net/news/article/241128/

また、将来的に受け入れ拒否をゼロにしていくためには、事業者への取り組みだけでなく、未来を担う子供たちへの教育も重要と考え、2023年から、盲導犬子ども向け動画サイト『にちもうジュニア』をオープンし、子供たちがいつでもどこでも気軽に学べる環境を整えました。 
この度、『にちもうジュニア』にて、新たに11本の動画を公開しました。すでに公開されている盲導犬についての動画などに加え、盲導犬の一生・視覚障害・訓練士の仕事・ボランティアについてなど、誰でもわかりやすい動画です。
盲導犬子ども向け動画サイト『にちもうジュニア』

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