複雑で多様な匂いを可視化する匂いセンサー『FlavoTone』の販売開始
匂いに関するさまざまな課題を解決し、新しい価値を創出するソリューションを提案
2023年11月6日
三洋化成工業株式会社
三洋化成工業株式会社(本社:京都市東山区、代表取締役社長:樋口章憲、以下、三洋化成)は、複雑で多様な匂いを可視化することができる匂いセンサー『FlavoTone(フラボトーン)』の販売を開始しましたのでお知らせいたします。『FlavoTone』は、特定の匂いだけでなく複雑な匂いの可視化ができるため、匂いによる品質管理、特性比較、モニタリングといったソリューションを提供することが可能です。
また、機器の販売だけでなく、レンタルや受託分析、個別の課題に対するソリューション提案などのサービス提供も行っています。当社は、『FlavoTone』を通して匂いに関する課題を解決し、より良い社会インフラづくりに貢献していきます。
【開発の背景】
人間は、五感によって情報を集め、状況を把握し、判断を行なっています。一方でこのような感覚に頼った指標は表現があいまいで、人による感じ方も異なり、データの信頼性や再現性が保たれないことや、データの共有・蓄積が難しいなどの課題があり、五感の代替として客観的に感覚を可視化するセンサーが求められています。
嗅覚を可視化する匂いセンサーは、医療・食品・環境・安全など幅広い分野への応用が期待されています。その一方で、匂い成分の種類は膨大で、匂いを認識するメカニズムも複雑で不明確な部分も多いことから、五感の中で最もセンサーの開発が遅れています。これまで特定の匂いを検出する匂いセンサーは多く開発されてきましたが、複雑な匂いを人間の鼻のように識別できるものついては本格的な社会実装が進んでいないのが現状です。
【匂いセンサー『FlavoTone』について】
人間の鼻は、匂い分子が嗅覚受容体に吸着すると嗅覚細胞から電気的な信号が発せられ、その信号が脳に伝達されることで匂いを識別すると考えられています。当社が開発した匂いセンサー『FlavoTone』は、この嗅覚と同様のメカニズムで、嗅覚受容体に相当する匂い応答材料、匂い分子が吸着することによる電気特性の変化で匂いを検知するプローブ、得られた信号パターンから匂いを識別する解析アプリからなり、複雑な匂いを可視化することができる装置です。
複雑な匂いを可視化できるようにしたキー技術の1つが、プローブに用いた匂い応答材料です。匂い応答材料は、当社独自設計に基づいた樹脂材料、添加剤、導電材料などで構成されており、匂い分子が吸着すると膨潤する性質を有しています。従来の匂いセンサーの応答材料に比べて、匂い分子に対する応答特性を幅広く変えることが比較的容易で、『FlavoTone』では、応答特性が異なるプローブを複数搭載し、これらを組み合わせることで、複雑な匂いでも識別することを可能にしました。また、雰囲気中の湿度など、外部環境の影響を比較的受けにくい点でも優れています。
さらに、得られたデータを機械学習に解析させるアプリケーションも搭載し、品質管理、特性比較、モニタリングなど、ニーズや用途に合わせてアウトプットできるようにしました。
このような匂いセンサー『FlavoTone』により、食品、医療・ヘルスケア、香粧品、安全・防災、工場、環境など多様な分野において、効率・利便性・精度向上、異常検知、マーケティング・ブランディングの促進など、新しい価値を提供できるものと考えています。
多くの企業・研究機関に幅広い用途開発に取り組んでいただけるよう、レンタルや受託分析に加え、個別の課題に対するソリューション提案などのサービスの提供も行なっています。今後、多様化する消費者ニーズや、複雑化する社会課題に対し、顧客との共創を通じて、より良い社会インフラづくりに貢献していきます。
【『FlavoTone』の概要】
<『FlavoTone』卓上機>
<特長>
・複雑・多様な匂いを識別することができる。
・シンプルで拡張性が高い。
・外部環境の影響を受けにくく、安定したセンシングで再現性が高い。
・測定対象によって使用するプローブの種類や数をカスタマイズ可能。
・ガスクロマトグラフィーのような複雑な測定メソッド・前準備が不要。
・測定時間が比較的短い。
<想定されるソリューション事例>
(1)品質管理
①食品業界
肉類、魚介類、乳製品、包装食品などの腐敗や汚染を示す不快な匂いを検出することで粗悪品や安全性
の低い食品の流通を防ぐことが期待できます。
②医薬品・化学業界
原材料に含まれる異常な匂いを検出することで、品質管理に貢献します。
③化粧品業界
フレグランス、香水、ローション、その他のビューティーアイテムの香りの特性把握をサポートします。
④自動車業界
製造上の欠陥、揮発性有機化合物(VOC)、カビなどの存在によって生じる匂いを検出することが期待
できます。
(2)特性比較
①家電業界
たとえば、匂いセンサーを搭載したスマート冷蔵庫は、食品の腐敗を検知してユーザーに警告し、安全
性の向上および食品ロスの削減に貢献します。
②クリーニング業界
使用前後の匂いを検出して定量化することで、製品の有効性を示すことが期待できます。
③運輸業界
清潔で新鮮な車内空間の維持をサポートします。
④旅行業界
ホテル、リゾート、航空会社などにおいて、快適な室内環境の維持およびそのアピールに役立ちます。
⑤飲料業界
新商品の開発・販売の際に、既存商品との差別化を示す根拠として期待できます。
(3)モニタリング
①製造業
有毒ガス、揮発性有機化合物(VOC)などの存在を検知して警告し、作業者の安全確保に貢献します。
②小売業
店舗内の室内環境をモニタリングし、顧客体験の向上や売り上げ向上に貢献します。
③石油化学産業
臭気レベルを継続的に監視し、漏出や流出、その他の操業上問題となる異常な臭気の特定などが期待
できます。
④医療
特定の病気や症状には特有の匂いがあると言われています。疾病マーカーとしての役割が期待できます。
※ 匂いセンサーの新サイトをOPENしました。
https://kaori.sanyo-chemical.co.jp/