錠剤嚥下障害などで「錠剤を砕いて飲む」人が100人に1人、7割超が「錠剤を砕いて飲む」リスクを認知せず
錠剤の粉砕服薬は効きすぎや副作用も多く危険。飲みにくさを感じたら、まずは薬剤師や医師に相談を
2023年10月25日
沢井製薬株式会社
錠剤嚥下障害などで「錠剤を砕いて飲む」人が100人に1人 7割超の人が「錠剤を砕いて飲む」ことのリスクを認知していない 「錠剤の粉砕服薬は効きすぎや副作用も多く危険」 公的機関の警鐘が続く 飲みにくさを感じたら、まずは薬剤師や医師に相談を
沢井製薬株式会社(本社:大阪市淀川区、代表取締役社長:木村元彦)は、2023年9月28日(木)~29日(金)の間、50〜70歳代の男女計2,000人を対象に、患者さんなどによる服薬の状況と不適切服薬によるリスクの認知状況などを調べる調査を行いました。
「錠剤嚥下障害」は、薬を飲み込むことが難しくなり、本来飲み込んで胃腸に運ばれる薬が、口やのど、食道に留まってしまうことで薬の効き目に影響を与えたり、錠剤が留まった部分に粘膜損傷や潰瘍が発生したりする障害です。日本は2024年に50歳以上人口が5割を超えると予測され、「錠剤嚥下障害」を起こす人の増加が懸念されています。そのような中、錠剤嚥下障害の回避や飲み込みにくさを解消するために錠剤を砕いた服薬が行われ、「効き過ぎ」「効果低減」などの治療への悪影響や「苦みの増大」による更なる薬への抵抗感を引き起こすなどが問題となっています。
特に、「徐放性製剤※の粉砕投与」に関しては、2018年と2020年に公益財団法人日本医療機能評価機構、本年3月には独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医療事故を防止する観点での注意喚起、あるいは「医療安全情報」が発出されており、「徐放性製剤が粉砕、分割して投与される事例が繰り返し報告されている」状況に警鐘が鳴らされている危険な状況が現在も続いています。
沢井製薬は、今後もこれらの調査活動や服用しやすいジェネリック医薬品の開発を通して、適切な服薬の啓発と服薬そのものの改善に努めてまいります。
※有効成分の放出速度などを調節することによる投与回数の減少、薬効の持続、副作用の低減などを目的に開発された製剤。
調査結果のトピックス
■3割の人が薬などで飲み込みにくさを感じており、50代女性で4割と最も感じている。
3カ月以内服薬経験者の3割(29.8%)が、薬やサプリを飲むときに「飲み込みにくい」と感じている。年代別では50代(32.6%)が最も高く、特に50代女性の4割(40.5%)が「飲み込みにくさ」を感じている。
■飲み込みにくさを感じるのは「病院で処方された錠剤」で、「水の量が少ない時」と「錠剤が大きい時」。
約3割(27.3%)の人が病院で処方された錠剤を「飲み込みにくい」と感じており、「水の量が少なすぎた時」(34.1%)と「錠剤が大きい時」(29.8%)で飲み込みにくさを強く感じている。
■毎回の服薬時に飲み込みにくさを感じる人のうち、「砕いて飲む」など不適切な飲み方をしている人は2割超。
飲み込みにくさを感じたときの対処法としては、一般的な「水を多く飲む」(48.3%)が多く、次に「服薬用のオブラートを使って飲んだ」(3.4%)、「錠剤を砕いて飲んだ」(1.8%)があげられている。特に毎回の服薬時に飲み込みにくさなどを感じる人の7.5人に1人(13.3%)は、錠剤を砕いて飲んでいる。その他にも、「食事や飲み物に混ぜる」(2.2%)、「薬剤をカプセルから出して飲んだ」(6.7%)などの不適切な服用方法を合わせると2割超に及ぶ。
■「錠剤を砕いて飲む」ことのリスクに対する認知は低い。
錠剤を砕いて服用することで起きるリスクのうち、7割超の人は「薬が効きすぎる」ことや「薬が効きにくくなる」ことを知らない(効きすぎる/74.2% 効きにくくなる/72.3%)。
■飲み込みにくさには、自分で対応する例が多く、医師や薬剤師などの専門家に頼ることは少ない。
約3割が飲み込みにくさを感じる一方で、「医師に相談」(1.6%)「薬剤師に相談」(0.4%)している人はわずか。
調査結果サマリー
■3割の人が薬などで飲み込みにくさを感じており、50代女性で4割と最も感じている。
3カ月以内服薬経験者の3割(29.8%)が、薬やサプリを飲むときに「飲み込みにくい」と感じている。年代別では50代(32.6%)が最も高い。特に50代女性の4割(40.5%)が「飲み込みにくさ」を感じている。
■飲み込みにくさを感じるのは「病院で処方された錠剤」で「水の量が少なすぎた時」と「錠剤が大きい時」。
約3割(27.3%)の人が病院で処方された錠剤を「飲み込みにくい」と感じており、「水の量が少なすぎた時」(34.1%)と「錠剤が大きい時」(29.8%)で飲み込みにくさを強く感じている。
■ 毎回の服薬時に飲み込みにくさを感じる人のうち、 「砕いて飲む」など不適切な飲み方をしている人は2割超。
「毎回の服薬時に飲み込みにくさなどを感じる人」の7.5人に1人(13.3%)は、錠剤を砕いて飲んでいる。その他にも、「食事に混ぜる」(2.2%)、「薬剤をカプセルから出して飲んだ」(6.7%)などの不適切な服用方法を合わせると2割超に及ぶ。
Q5.服薬時に飲みにくさを毎回感じている人の飲みにくい場合の対処 (n=45複数回答)
■「錠剤を砕いて飲む」ことのリスクに対する認知は低い。
錠剤を砕いて服用することで起きるリスクのうち、7割超の人は「薬が効きすぎる」ことや「薬が効きにくくなる」ことを知らない(効きすぎる/74.2%※1 効きにくくなる/72.3%※2)。
※1 「薬が効きすぎることがある」ことを知っている人が25.8%しかおられなかった=74.2%の人がリスクの認知がなかった
※2 「薬が効きにくくなることがある」ことを知っている人が27.7%しかおられなかった=72.3%の人がリスクの認知がなかった
■飲み込みにくさには、自分で対応する例が多く、医師や薬剤師などの専門家に頼ることは少ない。
約3割が飲み込みにくさを感じる一方で、「医師に相談」(1.6%)「薬剤師に相談」(0.4%)している人はわずか。
沢井製薬 「加齢による錠剤嚥下障害や錠剤の粉砕に関する生活者の実態調査」実施概要
●調査時期:2023年9月28日(木)〜9月29日(金)
●調査対象:合計2,000人対象
男性 963人<50代:324 60代371 70代268>
女性 1037人<50代:326 60代391 70代320>
●調査方法:インターネット調査
●調査委託先:(株)マクロミル
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
昭和大学薬学部客員教授 倉田なおみ氏に聞く
錠剤嚥下障害などで「錠剤を砕いて飲む」人がインターネットで回答できる人でも100人に1人。
高齢者介護施設などではさらに高率。薬効や医療事故防止の観点から正しい服用を!
■加齢による「嚥下障害」は、誰にでも起こりうる障害。とりわけ錠剤の服用時には注意が必要
嚥下障害とは、疾患によってあるいは加齢に伴ってしだいに嚥下能力(飲み込む力)が衰え、食事や飲み物などを上手に飲み込めなくなる障害です。病院で処方される「錠剤」も飲み込みにくいものの一つで、この症状は「錠剤嚥下障害」と呼ばれています。「錠剤嚥下障害」が起きると、錠剤が口やのど、食道に留まってしまい、正しい投薬治療効果を得られなくなります。さらには、錠剤が留まった部分に粘膜損傷や潰瘍が発生するといった事態も引き起こします。
■錠剤を飲み込みにくいと感じた方がやってしまう決定的な失敗は、「錠剤を砕いて飲む」こと。
錠剤を飲みにくい場合、やってしまいがちな失敗が二つあります。一つは、苦痛が原因で服薬をやめたり、頻度を減らしたりすること。もう一つは、「無理やりにでも飲もう」とすること。本調査でもその傾向が見られます。特に服薬時にいつも飲み込みにくさを感じている方のうち、一割以上の方が「錠剤を砕いて」飲んでいます。これは、本人のみならず、ご家族も同様で、「少しでも飲みやすくしたい」との思いからしているケースが多いようです。しかし実は、「錠剤を砕いて飲む」ことが、最もやってはいけないことなのです。
■飲み込まれた錠剤は胃や腸に運ばれ、適した場所で壊れるように設計されている
なぜ、錠剤を砕いて飲んではいけないのか? それは、錠剤は適した場所で壊れ、適した薬効を得られるように設計されているからです。砕いてしまうと、狙い通りに効かないだけでなく、効き過ぎて副作用や苦痛が生じることもあります。
特に、薬の成分がゆっくりと溶け出し、効果が長く続くように加工されている「徐放性製剤」を粉砕して服薬すると短時間で薬の効果が出て危険です。
■公的機関からも繰り返し警鐘が鳴らされている「徐放性製剤の粉砕投与」
「徐放性製剤の粉砕投与」に関しては、2018年の公益財団法人日本医療機能評価機構薬による注意喚起に始まり、2020年に医療事故防止の観点から「医療安全情報」が、本年3月には独立法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)からも「医療安全情報」を発出。「徐放性製剤が粉砕、分割して投与される事例が繰り返し報告されている」として警鐘が鳴らされている危険な状況が現在も続いています。
■飲み込みにくさを感じたら、自分だけで判断・対応せず、医師や薬剤師などの専門家に相談を
本調査でも報告されていますが、飲みにくさを感じている方であっても、多くの方は医師や薬剤師などの専門家に相談することもなく、我流で判断して対処しています。今は飲みやすさを考えた剤形の薬もあります。少しでも飲みにくさを感じることがあったら、まずは専門家に相談することから始めてください。
倉田なおみ (くらた なおみ)氏
昭和大学薬学部 社会健康薬学講座 社会薬学部門・臨床薬学講座 臨床栄養代謝学部門 客員教授。
昭和大学薬学部卒業後、昭和大学病院薬剤部入部。1996年昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 薬局長。2009年昭和大学薬学部薬剤学教室 准教授、2014年同学部 社会健康薬学講座 地域医療薬学部門(現、社会薬学部門) 教授。2019年同部門 客員教授。2021年、同学部 臨床薬学講座 臨床栄養代謝学部門 客員教授(併任)。また日本臨床栄養代謝学会監事、日本医療薬学会代議員、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会評議員ほか役員を歴任。「疾患別に診る嚥下障害(共著)」(2013年)「経管投与ハンドブック第4版」(じほう 2020年)「頻用薬のこれなんで」(じほう2021年)「食事状況から導く薬の飲み方ガイド」(社会保険研究所 2023年)など著書多数。