島の老朽船を蘇らせる! 阪南大学が挑む地域資産のアップサイクル
阪南大学(所在地:大阪府松原市、学長:平山 弘)総合情報学部 総合情報学科 末田 航教授のゼミナール(SOIL: South Osaka Inclusive Labo)は、広島県大崎下島に拠点を置く一般社団法人まめな(所在地:広島県呉市、代表理事:梶岡 秀)と連携し、同島で現存する唯一の木造みかん運搬船「農船」を対象に、老朽化船のDX・アップサイクル(廃棄物や不要になったものにデザインやアイデアを加えて、元のものよりも価値の高い別の製品に生まれ変わらせること)による再生活用を探るフィールドワーク型プロジェクトを実施。
かつて島の産業を支えた農船を軸に、島の人々とともに海の暮らしのこれからを考える新しい地域連携のかたちである。
■背景
瀬戸内海・大崎下島は、柑橘産業とともに発展した島。かつては島の港から多くの木造船がみかんを運び出していましたが、高齢化や橋の開通により、船の文化は急速に失われつつある。そこでこのプロジェクトでは、記念保存ではなく、実際に活用される船として次世代に引き継ぐことを目指している。
■プロジェクト詳細
2025年夏には、末田教授と学生が現地に入り、連携団体「まめな」に滞在する広島大学・叡啓大学のインターン学生と協働して、農船改修に向けた環境整備を実施。ソーラーパネルと蓄電池で電源の自給を可能にするオフグリッド化、ワークショップを通じて、島の人々とともにこれからの船の再生活用方法を構想。
今後は、社会問題化している、不法係留船・老朽船を水上グランピングハウスや小型電動船としてアップサイクルするなど、石油を使わないエコな運用モデルの検討も進めている。この過程で、末田教授の専門である水上ドローン技術やインクルーシブデザインの応用も視野に入れたDXによる“再資源化”の可能性を探っている。
■学生の関わり
島の住民ヒアリングや農船へのオフグリッドシステム設置、活用アイデアの企画・デザインといったプロセスを通じて、実践的な地域課題解決型の学びを体験。単なる技術実習に留まらず、地域の記憶と未来をつなぐ社会実装の学びとして位置づけられている。
■今後の展望
アップサイクルされた船を舞台に、観光や教育、アートなど多様な利活用を模索しながら、地域資産の継承と「海の学び」の新たな拠点づくりを進めていく。さらに、こうしたDX×地域の挑戦を通して、地域の歴史と未来をつなぐ学びを広げていく予定である。

