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投稿者:

ZYAO22編集部

オンラインセミナー 「AI時代の電力インフラをどう支えるか ―市場の拡大と次世代データセンター戦略」開催

AIによる意思決定支援、データセンターと電力システムの共創・変革

2025年9月24日
公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団

 

セミナーで使用されたスライドより(C)高嶋隆太

 

 公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(所在地:東京都港区、理事長:中山幹康、略称:日本GIF)は、2025年7月31日(木)午後2時から、Zoomを利用したオンライン形式にて、東京理科大学創域理工学部教授で当財団専務理事の高嶋隆太を講師に、「AI時代の電力インフラをどう支えるか―市場の拡大と次世代データセンター戦略」と題したセミナーを開催しました。

 

開催趣旨

 生成AIの急速な普及により、世界各地でデータセンター(Data Center: DC)の電力・冷却需要が前例のないペースで増大しています。機械学習アルゴリズムや大規模言語モデルのリアルタイム推論には、高性能GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)が不可欠です。これらの装置は瞬時に大量の電力を消費し、同時に膨大な熱を発生させます。その結果、送電網のピーク負荷が上昇し、送電・変電設備の増強や冷却水・廃熱処理設備の整備が追いつかない地域が出現することが懸念されます。

 本セミナーでは、予想されるAI計算需要を想定し、DC事業者が直面する経済的課題を整理しました。また、需要急増が電力システム全体に及ぼす影響を検証し、再生可能エネルギー導入が進む中で注目される「プロシューマー」(自ら電力を生産・消費する個人や事業者)の役割に焦点を当て、プロシューマーとDC事業者、それぞれの拡大が社会に及ぼす影響について考察しました。さらに、デジタル変革(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)を同時に推進する政策オプションを提示し、AI駆動社会に必要な電力基盤の構築に向けた具体的なヒントを提案しました。

講演要旨

1.AI産業と電力システム

・AI産業は急速拡大しており、生成AIの処理に必要なGPUサーバー1台あたりの消費電力は一般家庭の10〜数十世帯分に相当。DCは単なるサーバーの置き場所から、AI処理を行う“AI Factories”へ

・AI技術は電力需給予測や再生可能エネルギーの運用の最適化に寄与する一方、需要増による電気料金の上昇やCO2排出増、DC立地の集中による地域偏在やセキュリティリスクの懸念

2.各機関からの報告

・AIを支えるDCの運用には、再エネ・原子力・天然ガスを組み合わせた柔軟な電源構成が必要。さらに、DC需要や地域偏在を踏まえ、電源の多様性に加えて、ピークシフトやオフグリッド運用といった政策的インセンティブの設計も肝要

3.第7次エネルギー基本計画

・日本の第7次エネルギー基本計画における電源構成は、2050年のカーボンニュートラル実現を目標に、LNGへの転換と脱炭素火力化、再生可能エネルギーの割合拡大を計画

・新たな課題として、電力需要増と脱炭素の同時実現が必要

4.モデル分析:データセンターの市場への影響

・DCやプロシューマーが将来のエネルギーミックス(電力構成)に与える影響を分析した結果、(1)電力価格はDCの需要増によって上昇するが、その程度は再生可能エネルギーの普及率に依存、またプロシューマーの存在によってさらに上昇、(2)DCとプロシューマーの存在によって、消費者と発電事業者(生産者)の余剰は増加、(3)DCの価値が大きいほど、再エネ電源に大きな投資が行われ、二酸化炭素排出量は減少

・本分析では、電力システムに消費者、発電事業者、送電事業者(ISO)、DC、プロシューマーが存在すると想定、DCは電力需要だけでなく、経済的価値を生むと仮定。DCの利活用やプロシューマーの出現は、将来的な電源構成における再エネ割合を増加させる可能性、またDCの価値を低下させない施策が必要

5.おわりに

・AI時代の電力インフラを支える方策には、①AIによる意思決定支援、②DCと電力システムの共創変革の2つの側面が存在。前者は、AI技術による意思決定と市場との相互作用、後者は、DCから得られる収益(利用価値)と電力価格(運転コスト)との関係の不確実性に課題。今後の展開として、DCの市場支配力の影響や、蓄電システムとの相互作用を注視

 

 講演後の質疑応答では、AI市場の定義、DCの適地、蓄電の役割、AI技術進歩の影響等、多様な視点から議論が行われました。

 

 セミナー終了後のアンケートによると、「AI産業と電力システム」や「第7次エネルギー基本計画」のパートへの関心が高かったことがわかりました。この他にも多くの質問や意見が寄せられ、AI時代の電力インフラへの高い関心が見て取れました。

 

セミナー概要

主  催: 公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(日本GIF)

日  時: 2025年7月31日(木)14:00~15:30

名  称: オンラインセミナー「AI時代の電力インフラをどう支えるか

―市場の拡大と次世代データセンター戦略」

開催形式: Zoomを利用したオンライン形式(ウェビナー)

講  演  者: 高嶋隆太(東京理科大学創域理工学部教授、日本GIF専務理事)

司  会  者: 坂本晶子(日本GIF事務局長)

参  加  費: 無料

動  画: https://gif.or.jp/seminar_youtube/ai-2/

 

講師略歴

高嶋隆太


東京理科大学創域理工学部教授。1976年生まれ、東京都出身。東京大学大学院工学系研究科博士課程中途退学後、東京大学助教、電力中央研究所協力研究員、千葉工業大学准教授、原子力安全研究協会研究参与などを経て現職。博士(工学)。専門分野は、エネルギー経済学、政策科学、健康経済学。

 

 

セミナーで使用されたスライドより(C)高嶋隆太



セミナーで使用されたスライドより(C)高嶋隆太

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=この件に関するお問い合わせ先=
公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(日本GIF) https://gif.or.jp/ 担当:事務局長 坂本晶子 Phone: 050-5601-8106 e-mail:info@gif.or.jp