EY Japan、2024年株主提案の動向について最新の調査結果を発表
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 近藤 聡、以下EYSC)は、2024年上半期(1月から6月)に日本で実施された株主総会の動向をまとめた「2024年株主提案の動向について」(以下、本調査)を発表したことをお知らせします。本調査は、2024年上半期のアクティビストから株主提案を提出された企業や、株主提案の賛成が高い企業の特性を明らかにし、当該企業の財務・株価パフォーマンス、議決権行使助言会社の推奨結果をまとめています。
<本調査の背景>
近年、アクティビストと呼ばれる株主としての権利を積極的に行使する投資家が、さまざまな形で日本株式市場に参入し、日本企業に対して企業価値向上のため影響力を及ぼすことを意図する提案が増加しています。これは、①日本企業の資本効率改善期待、②長期的な低金利を背景とした金余りから大量の資金がアクティビストに流入したことで、アクティビストが巨大化したこと、③アクティビストがこれまで活動してきた米国企業ではターゲット企業が少なくなり、投資する上での競争が激化したことなどから、日本が新たな投資先となったことが考えられます。このような状況を踏まえ、最新の株主提案の動向から、アクティビストの介入後、市場の賛同を得るために上場企業に求められる対応を分析しました。
<調査結果概要>
2024年上半期の株主提案対象企業は、前期(2023年上半期)と比べ7社多い109社で、アクティビストによる提案は、全体の6割近くを占めました。本年度上期の本調査の結果概要は以下のとおりです。
●株主提案は増加していますが、低PBR(株価純資産倍率)企業を中心にアクティビストからの株主提案は増加し、資本政策関連を中心に高賛成率(賛成率20%以上)の株主提案は前年比で減少しました。(表1)
表1:アクティビストによる株主提案で賛成率20%以上の議案の比率(1~6月総会かつES(環境・社会)提案を除く)
●アクティビズム対象企業の特徴と議決権行使助言企業(ISS)の傾向:セクター、時価総額帯を問わず、低PBR企業が株主提案のターゲットになっています。低PBR企業を厳しく評価するスタンスはアクティビスト(株主提案者)のみでなく議決権行使助言会社(ISS)にも共通しています。
●今期は低PBRながらも、経営改革でROEの改善を実行している企業が増加し、株主提案全体における賛成行使を抑制しました。(表2)
表2:資本政策関連の株主提案に対する議決権行使助言会社(ISS)のスタンス
<本調査を受けての考察>
株主提案による改革が必要かという観点から、株価・業績パフォーマンスが株主提案の議決権行使判断に大きな影響を与えるため、アクティビストから株主提案を受けた企業は改善計画の提示のみでは市場からの支持を得づらくなり、改善実績が求められます。アクティビストからの要求対応という観点や、株主総会において株主から支持を得るという観点からは、スピード感を伴った改善実績が重要となり、企業側としても株主の期待値を理解した上でのアクションが求められます。
株主の期待値を理解するためにも、株主とのエンゲージメント(対話)の積み重ねが一層重要となると考えられます。
EYパルテノン ストラテジーリーダー パートナー 篠原 学のコメント:
「低PBR脱却に向けて、多くの企業が東証の求める『資本コストと株価を意識した経営』に準じた目標と施策の設定を進めており、それが中期経営計画の策定にも反映されるようになりました。しかし、株主提案に対する市場の評価軸は『改善実績』に対する比重を置きつつあるため、このような計画の提示だけでは不十分です。中期計画の策定後においても、初期段階からの利益成長、必要に応じた目標の上方修正を行うことが重要となります」
本調査結果の詳細は、以下ページ中ほどのURLよりダウンロードください。
https://www.ey.com/ja_jp/news/2024/10/ey-japan-news-release-2024-10-07
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