【注意喚起】“ずぼら調理”が招く危険 ~トリセツをよく読んで「調理家電の事故」を防ぎましょう~
食欲の秋が到来です。近年は、時間効率を重視するタイムパフォーマンス(タイパ)志向の高まりを受けて、手軽な調理家電を用いてできるだけ手間をかけない「ずぼら調理」が人気です。しかしながら、その中には取扱説明書及び商品パッケージに記載されている注意事項(以下「注意事項」という。)をよく確認せずに誤った使い方をして事故に至ったケースがあります。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、「調理家電の事故」を防ぐために注意喚起を行います。
2019年から2023年にNITEに通知のあった製品事故情報※1では、調理家電の事故は合計494件ありました。そのうち事故原因が判明した226件の中では、使用者の誤使用・不注意が関係しているものが44%(99件)を占め、最も多くなっています。
『できるだけ手間をかけたくない。』『ちょっと温めるくらいなら大丈夫。』といったずぼらな気持ちから、注意事項を確認せずに誤った使用方法をしてしまうと大きな事故につながるおそれがあります。
調理工程を省いても、安全のための手間だけは省かないようにお願いします。
(※1)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
事故の発生状況
NITE に通知された製品事故情報のうち、2019年から2023年までの5年間に発生した「調理家電の事故」494件について、事故発生状況を以下に示します。
年別の事故発生件数
調理家電の事故における「年別の事故発生件数」を図1に示します。事故件数の推移は横ばい傾向にあります。
図1 年別の事故発生件数
(※2)2022年の事故件数が多い理由は、同じ型式の「電気ケトル」を使用中に、電気ケトル本体と電源プレートとの接続部から発煙する不具合が生じた事故が45件発生しているためです。
(2023年1月にリコールを実施)
原因別の事故発生件数
調理家電の事故494件のうち、調査中の事故(49件)及び原因不明の事故(219件)を除く226件についての「原因別の事故発生件数」を図2に示します。調理家電の事故は、使用者の誤使用・不注意が関係しているものが最も多く、事故原因の44%を占めています。
図2 原因区分別の事故発生件数
製品別の事故発生件数
調理家電の事故における「製品ごとの事故発生件数」を図3に示します。例年「電子レンジ」、「IHこんろ」の事故が多く発生しています。
図3 製品別の事故発生件数
調理家電の事故を防ぐポイント
調理前に、取扱説明書及び商品パッケージに記載されている注意事項を確認する。
・禁止されている容器を加熱しない。
調理家電に容器を入れて加熱する際、種類や材質によっては取扱説明書に禁止されているものがあります。例えば、「電子レンジに金属製の容器やアルミホイルを使用してしまうと金属部分から火花が発生して発火するおそれがある」ので、使用が禁止されています。ただし、オーブン機能付き電子レンジの場合、「加熱モードによっては金属製品やアルミホイルの使用が可能になる」など、調理方法に応じて注意事項が変わる場合もあります。また、取扱説明書に記載が無くても商品パッケージに注意事項が記載されている場合もあるので、調理家電側・商品側両方の注意事項をよく確認することが大切です。
・禁止されている食品を加熱しない。
電子レンジで卵を加熱すると破裂する事は広く知られていますが、「ゆで卵が入ったおでん」などの煮込み料理でも同様に破裂するおそれがあり、注意が必要です。レンジ加熱はマイクロ波と呼ばれる電磁波で食材内部の水分を温めるしくみです。卵や切り込みを入れていない栗など、膜や殻に覆われている食材を電子レンジで加熱すると、食材内部の水分が膨張して圧力が高まり、破裂しやすくなります。
・揚げ物調理をする際は、取扱説明書に定められている油の量を守る。
IHこんろは火を使わずに調理できる上に安全機能が充実しているため、火災の心配がないように思われがちですが、取扱説明書に定められている油量よりも少ない油で揚げ物調理をすると、温度が急激に上昇し、温度センサーが正確な温度を測ることができなくなり、発火するおそれがあります。また、揚げ物調理にもかかわらず通常の加熱メニューを選択したり、反りや変形がある鍋を使用したりすることによっても、温度センサーが正しく働かなくなる原因となります。
安全機能を過信せず、取扱説明書に記載されている注意事項をよく確認しましょう。
調理中は、その場を離れない。加熱しすぎない。
食品の様子を見ながら少しずつ加熱することで、事故を防ぐことができます。短い時間でも調理中は機器本体から離れないようにし、やむを得ず離れる場合は調理を中断しましょう。電子レンジの場合、水分が少ない食品(パンや芋など)は水分を多く含む食品よりも比較的早く炭化し、スパーク(火花が発生)して発火します。特に油分を多く含む食品(天ぷら、肉まんなど)は、加熱し過ぎた際に爆発的に燃焼するおそれがあるため、注意が必要です。
調理後は、こまめに掃除する。
調理家電はこまめに掃除を行ってください。特に電子レンジとオーブントースターで汚れによる事故が目立っています。電子レンジは庫内やドアの内側に食品かすなどの汚れが付着した状態で使用すると、炭化してスパーク(火花が発生) し、発火するおそれがあります。オーブントースターは庫内や受け皿に食品かすや油分などの汚れがある状態で使用すると、ヒーターの熱で食品かすや油分などが予期せぬ過加熱となり、発煙や発火のおそれがあります。
「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト」のご紹介
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。
また、事故事例の【SAFE-Lite検索キーワード例】で例示されたキーワードで検索することで、類似した事故が表示されます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
今回の注意喚起動画はこちら
>> 電子レンジ「11.カップ麺容器の発火」
>> 電子レンジ「12.ペットボトルの破裂」
>> IHこんろ「4.少ない油で発火」
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。