GI ポテンシャルマップと多機能評価技術を開発し、グリーンインフラ実装支援サービスを開始
気候変動に対応した流域治水のためのグリーンインフラ導入に向けて、効果的な導入場所や内容の検討を支援
2024年9月26日
株式会社建設技術研究所
株式会社建設技術研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:西村達也)は、気候変動に対応した流域治水のためのグリーンインフラ導入に向けて、効果的な導入場所や内容の検討を支援する「グリーンインフラ(GI)ポテンシャルマップ」、及び「グリーンインフラの多機能総合評価技術」の開発を行いました。また、これらの技術を用いて、グリーンインフラ実装支援コンサルティングサービスを開始しました。
1.背景
「グリーンインフラ(GI)」は、自然環境が提供する多様な機能を利用したものです。GIを導入する際には、地域毎の異なる特性に応じて、GIの機能を効果的に活用できるメニューを選ぶことが重要です。しかし、これまでは地域特性を一元管理し、緑の多様な機能を総合的に評価できる技術は確立されていませんでした。
2.開発した技術の特徴、詳細
今回開発した技術(詳細は以下に示します)を用いることで、地域の良さを最大限に活かしたグリーンインフラメニューの提案や導入効果の評価、各種計画の策定支援など、グリーンインフラの実装に係る様々な支援サービスの提供が可能となります。
(1) グリーンインフラポテンシャルマップ
本マップは、複数の機能に関する特徴を地理情報システム(GIS)で一元的に分析表示するものです。現況で、どの場所にどのような課題があるのか、またその課題に対してどのようなGIメニューが有効なのかを分析するのに役立ちます。入力データは各自治体が所有する情報やオープンデータを用いて作成でき、低コストで高い汎用性を実現しました。
例えば防災調整池の整備では、次の5つの効果を点数化(表1)し、合計点の高い場所をポテンシャルマップ(図1)から選定できます。
1. 安全安心 :冠水・浸水実績箇所から近いほど冠水・浸水対策効果として高く評価
2. 生態系保全 :周辺緑地から近いほど生態系ネットワークの形成効果として高く評価
3. 経済効果 :商業施設からの距離が近いほど集客が見込め、経済効果として高く評価
4. コミュニティ:人口密集地に近いほど訪問客が多く、コミュニティ効果として高く評価
5. 環境教育 :学校からの距離が近いほど,フィールドの利活用効果として高く評価
図-2は、上記の手順で選定された関東近郊のA市の調整池について、現況特性と地域住民の意見を反映したグリーンインフラを実装した整備イメージです。
(2) グリーンインフラの多機能総合評価技術
緑地に期待されるヒートアイランド対策や都市水害の軽減、温室効果ガス吸収、生物多様性確保などの様々な機能について総合的な評価技術を確立しました。
図-3 はdIIC※連結性指標を用いた生物多様性の機能評価の事例で、緑地と周辺の緑地とのつながりに着目して生態系ネットワーク(生きものの移動のしやすさ)を定量的に評価したものです。緑地と緑地のつながりに貢献しているほど高く(水色の円が大きく)評価されます。このように様々な緑地とそのつながり機能を個別に評価し、それらを総合的に評価することが可能な技術です。
※dIIC:delta Integral Index of Connectivity の略。生息地の質(面積など)と、生息地の空間配置(生息地同士の距離など)の観点から、生物の移動のしやすさ、移入のしやすさといった各生息地の利用の可能性を数値で算出する指標。
3.今後の展望
今後は、本技術を用いて様々な地域への実装支援サービスを展開してまいります。