わずか10-20秒の軽運動で子どもの脳血流が増加
― 小中学生を対象とした実験で判明 ―
わずか10-20秒の軽運動で子どもの脳血流が増加 ― 小中学生を対象とした実験で判明 ―
詳細は早稲田大学Webサイトをご覧ください。
<発表のポイント> ◆ 41名の子どもを対象に、短時間で低強度運動中の前頭部の脳血流を測定した。 ◆ 単調な動きのストレッチでは脳血流はほとんど変化しなかったが、体を捻るストレッチなど、一定の身体的・認知的負荷を伴う軽運動ではそれが顕著に増加することが明らかになった。 ◆ この結果が、今後、学校や塾など教育現場において、誰もが取り組みやすい脳を活性化する軽運動プログラムの開発に役立てられることが期待される。 |
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程の内藤 隆(ないとう たかし)、早稲田大学スポーツ科学学術院の石井 香織(いしい かおり)教授、同・岡 浩一朗(おか こういちろう)教授らの研究グループは、41名の子ども(小学5年生~中学3年生、平均12.1歳)を対象に、7種類の軽運動中の前頭部の脳血流変化を専用機器「fNIRS」※1で測定しました。その結果、単調なストレッチ(両手を組んで上に伸ばすなど)では脳血流の増加があまり見られませんでしたが、一定の身体的負荷や認知的負荷がある種目(椅子に座って体を捻る、手指の体操、片足立ちなど)では脳血流が顕著に増加することを発見しました。この結果は、子どもの認知機能向上をもたらす、誰もが取り組みやすい短時間・低強度の運動プログラムの開発に役立てられる可能性があります。
本研究成果は、2024 年7月6日にネイチャー・パブリッシング・グループのオンライン総合科学誌『Scientific Reports』に発表されました。
■研究の波及効果や社会的影響
低強度・短時間の運動であっても、種目によっては前頭前野の脳血流が高まることが示されました。本研究で明らかとなった前頭前野の血流を高めやすいタイプの運動を組み合わせることで、子どもの実行機能を高める誰もが取り組みやすい運動プログラムが開発される可能性があります。また、身体活動量が低い成人や高齢者の認知機能低下を防ぐための対策にも、将来的に活用される可能性があります。
ただし、短時間かつ低強度の運動であっても前頭前野の脳血流が高まるということが本研究で示されましたが、それが実行機能の向上に実際に結びつくかについては、今後検証する必要があります。
■課題、今後の展望
本研究において、一定の身体的または認知的負荷があるタイプの運動であれば、低強度かつ短時間であっても前頭前野の脳血流が高まることが示されました。今後は、脳血流を高めやすい動きを組み合わせた3分程度の運動プログラムを作成し、その運動プログラムの実施が実行機能の向上に結び付くかどうかの検証を行います。
■研究者のコメント
子どもの間でも座りがちな生活が広まる中、体を少しでも多く動かすことが発育発達と健康保持にとって重要です。今回の研究で得られた知見を活かし、誰もが取り組みやすい脳を活性化する軽運動プログラムを開発し、学校や塾など教育現場での実践が広まることを目指します。
■論文情報
雑誌名:Scientific Reports
執筆者名(所属機関名):Takashi Naito* (Graduate School of Sport Sciences, Waseda University), Koichiro Oka (Faculty of Sport Sciences, Waseda University), and Kaori Ishii (Faculty of Sport Sciences, Waseda University)
掲載日(現地時間):2024年7月6日(土)
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-66598-6
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-024-66598-6
■研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)
本研究は、文部科学省科学研究費助成事業(21K11507)の支援を受けて行われました。