「微生物村」はいかに形成されるか
-材料の「地形」・「地質」が微生物群集のメンバーを左右-
概要
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター環境代謝分析研究チームの菊地淳チームリーダー、産業技術総合研究所(産総研)触媒化学融合研究センターの吉田勝研究センター長らの共同研究チームは、プラスチック表面に微生物が「村」のように微生物群集を形成する際の決定要因を解明しました。
本研究成果は、海洋におけるプラスチック利用の「適材適所」の実現に役立つとともに、海洋微生物群集の制御を通じて生物多様性の回復やブルーカーボンの増加に貢献すると期待されます。
今回、共同研究チームは、鶴見川河口水中の微生物群集を利用した生分解性評価系を構築し、37種類の生分解性オリゴマーの分解試験を行いました。化学構造から見ると、オリゴマーがアジピン酸を多く含むほど分子運動性・親水性が高く、速く生分解されたのに対し、芳香族化合物を多く含むものは反対の傾向を示しました。一方、分子運動性と親水性の高いオリゴマー表面には、そのオリゴマーを資化できる微生物が多い傾向が見られました。そこで、こうしたオリゴマーと微生物の種類の関係が必然であるか、偶然であるかを評価するため、生分解試験で得られたビッグデータを定量的群集形成評価法であるiCAMP法で解析しました。その結果、分子運動性と親水性の高いオリゴマー表面に、そうした表面を好む微生物がすみ着くのは必然であるが、分子運動性と親水性が中間程度のオリゴマー表面にすみ着く微生物の種類は偶然によって決まることが明らかとなりました。
この成果を応用すれば、プラスチックの表面物性を制御することで、プラスチックの用途に適した微生物群集をすまわせることが可能になり、海洋で使われるロープやブロックなどの材料設計に貢献することが期待されます。
本研究は、科学雑誌『Science of the Total Environment』オンライン版(4月25日付)に掲載されました。
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https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20240513_2/pr20240513_2.html