EY調査、期待に応えられていない世界の大学教育
現役生の3分の1が自身の選んだ大学について否定的または可もなく不可もないと回答
・ 学生が優先したいことの第1位は、質の高い教育と実社会への準備
・ オンライン学習の質が学生の満足度ランキングの最下位に
・ 教師たちはより多くの研修とデジタル教育ツールを取り入れる時間を希望
EYは、高等教育に関する新しい調査レポート(以下、本調査)を発表しました。 本調査によると、大学は教職員が学生の期待にいっそう応えていくために、自校のデジタル教育の実務および学生が大学でどのような経験をしているのかを、早急に総点検する必要があることが明らかになりました。
本調査は、11カ国(日本、オーストラリア、カナダ、インド、アイルランド、ニュージーランド、サウジアラビア、シンガポール、アラブ首長国連邦、英国、米国)の3,000人以上の大学生および大学院生を対象に行った調査で、大学スタッフのフォーカスグループ(グループ対話形式による調査)、および大学法人のトップへのインタビューから得られたデータを基に作成されました。
調査を受けた学生は、質の高い教育を最優先事項として挙げており(83%がそう回答)、対面での教育とオンライン学習の量の割合は重要ではないと答えているものの、オンライン学習の品質は、満足度が最も低いと回答しました。
学生が投資を望んでいる分野として、より効果的なオンライン教育提供に向けた教職員への研修の提供(45%)、より優れたオンライン学習教材の開発(41%)、学生に対する効果的なデジタル学習へのさらなる支援(40%)が挙がりました。
EY グローバル教育リーダーであるCatherine Fridayのコメント:
「デジタル教育テクノロジーへの投資は何年にもわたって大学法人トップの『To doリスト』に上っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行によって投資が一気に加速しました。もともと数年かけて導入する予定だったテクノロジーをコロナ禍で数週間のうちに始動しなければならなかったのです。私たちの生活がコロナ前のように戻ると考えている人は誰もいないでしょう。しかし、EYの報告書は、コロナ後の新しい世界で学生と教職員が効果的に活動していくために彼らに必要なツールを提供していくには、今よりはるかに多くの投資と研修が必要であることを示しています。こうしたシステムや実務は既存のシステムを何とか調整して利用するというよりも、サービス提供先である人たちを念頭に置いて設計する必要があります。システム設計の際は、何よりもまず学生を中心に考えなければなりませんが、成功のためには、システムや実務が教授陣や研究者、事務職員、サポートスタッフにとっても便利なものである必要があります。これは大きな変更となる場合もあります。しかし学生の3分の1が大学での自身の経験に対して否定的あるいは可もなく不可もないという感情を抱いている中で、教育の質が学生の優先順位のトップとなっていることから、学生を中心に据えたシステム設計を優先する必要があることは明らかです。世界中の大学が財政上の問題に直面している現在、すぐに対応できるような問題に取り組まないことで大学が学生を失うのは、意味のないことです」
新しいシステムは教職員の役に立つものの、研修と時間が必要
本報告書は、教職員が教育、学生支援、先進的な研究という彼らの主たる使命により力を入れられるよう後押しするためには、やるべきことがたくさんあることを明らかにしています。フォーカスグループの参加者であった大学スタッフたちは、オンラインまたはブレンディッド・ラーニング(eラーニングと対面授業を組み合わせた学習法)のカリキュラムとコンテンツの開発と、この方法による教育と学習の支援の提供におけるベストプラクティスについてさらなるトレーニングを受けたいと希望しました。
教職員とサポートスタッフは、現在、直観的ではなくて使いにくい、または重複している多種多様な新しいシステムやツールを使いこなすために多くの時間を使っていると感じており、彼らには、新しいツールや新しい働き方を消化する時間がよりいっそう必要です。
Catherine Fridayのコメント:
「テクノロジーは教職員、研究者、事務職員の業務負荷をはるかに軽減する可能性を秘めています。例えば、大勢の学生を相手にした対面式の講義を、質の高い自律学習のコンテンツに置き換えることで、教職員の時間を空け、その分の時間を少人数で行う対面式のグループ学習にさらに力を入れること、また学習に困難を覚えている学生を特定してサポートし、その学生に合わせた介入プランを設計するためにアナリティクスを行うなどの時間に充てることが可能です。また、定型業務の自動化、例えば、学生の出願書類の処理や成績評価、研究助成金申請書の提出といった業務の自動化を進めることで、大学で働くすべての人の作業時間を短縮することができます。しかし、どのような新しいシステムもユーザーを念頭に設計して、包括的なトレーニングを実施することが極めて重要です。本報告書によって、教職員の一部は、デジタルシステムが不適切に実装されている場合、それは教職員にとって最も重要なゴールである「学生と社会への教育と研究成果の提供」を達成する助けになるどころか、むしろ作業負荷の増加につながることがあると感じていることがわかりました。」
EY新日本有限責任監査法人 PAC教育セクター統括支援室長 パートナー 濵口 慎介のコメント:
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、教育機関の運営方法に大きな変革を求め、その中でもデジタル技術に関連する各種対応が重要な課題となりました。これはコロナ終息後においても同様であり、例えば対面主体の授業形態がオンライン併用になることにより、多様な背景を持つ学生に新たな教育機会を提供する一方で、魅力的なオンライン用コンテンツを制作する必要性や、実際にデジタル技術を使用する教職員のスキル醸成等の課題が生じています。また、学生管理をデジタル技術により効率化した場合、個人情報保護やサイバーセキュリティ確保の課題が生じます。EY Japanでは、教育機関が抱える各種課題解決に寄与することを通じて、教育の確かな発展に貢献したいと考えています」
本報告書はこちらのリンクからご覧いただけます。
※本ニュースリリースは、2023年11月8日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳し、日本の見解を加えたものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
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