不登校の過去最多人数更新を受けた緊急シンポジウムが開催
不登校に悩むご家庭が再登校への希望を託す数少ない機会で質問が殺到
2023年11月11日(土)に明治学院大学白金キャンパスで、不登校問題をテーマにしたシンポジウムが開催され、不登校に悩むご家庭や心理学を学ぶ学生など約200人が参加し、活発な議論が交わされました。
先日明らかになった令和4年データによれば、不登校児童生徒数は約30万人にのぼり、10年連続で過去最多を更新しています。
シンポジウムは、喫緊の課題と言える不登校問題について、当事者の方にとっての選択肢を増やす場となることを目的に企画、東京都港区教育委員会の後援を受けて開催に至りました。
不登校に悩む方々と問題解決に向けて対話し、実施可能な対策方法を考えるための希少な場となったことから、参加者からも数多くの質問や意見が寄せられ、再登校の実現に希望を託すご家族からの注目の高さが伺えました。
シンポジウムではまず、株式会社スダチの小川涼太郎代表取締役が登壇。再登校に導くためのスダチの事業内容、プログラムなどを報告しました。不登校がもたらす家族やお子さんへの将来的な影響、経済的な負担が増す実情などを説明しました。特に参加者の注目を集めていたのが、デジタル依存がもたらす影響について、さまざまな問題点を図式化したチャートの説明。デジタル依存を解消することで、再登校に導くための条件が整っていく具体的な流れを詳しく紹介したところ、チャート図を写真撮影する参加者も多く見受けられました。
また「再登校を無理なく達成するための方法」をテーマに、明治学院大学心理学部の小野昌彦教授が学術的な立場から講演しました。
小野教授からは、支援契約成立事例98%再登校の実績を誇る包括的支援アプローチ(行動アセスメントに基づく不安・恐怖低減、再登校・登校維持支援+学習指導・体力指導・社会性指導)の紹介がありました。不登校の解決には個々の事例をアセスメントして、個別の支援計画を作ってPDCAを実行することが重要と説明しました。また、再登校事例から導き出された「再登校の為の7つの要因」をまとめたチェックシートを提示。全国の自治体の担当者、保護者、教員から不登校の予防・再発防止、再登校に有効だと高い評価を受けている実情を報告しました。さらに、包括的支援アプローチを適用した再登校事例を3例紹介。タクト(のどか湧いたといった自分の状況)をマンド(〇〇ちょうだい)といった言葉に変えるだけで家庭内暴力のみられた不登校が改善した事例には、参加者から納得の声が出ていました。
さらに「いじめ」に関しての対応策もテーマになり、小野教授からは「いじめは学校の問題として保護者としても毅然とした対応が必要」と法的な背景を交えて説明していました。
このあと、不登校を経験した後、再登校を実現した3名の保護者の方々が登壇。悩みを抱えていた日々の思いなどを赤裸々に告白する姿に、参加者からも共感や驚きの声が出ていました。
不登校になった際の対応について登壇した保護者からは、スクールカウンセラーへの不信感などがあったことや、母親自身が好きなことをやるべきと指南され、ヨガなどに通ったがまったく効果が出なかった事実などを紹介。スクールカウンセラーや医師などからの一般的なアドバイスが役に立たなかったことを指摘していました。
また再登校を実現した際のお子様の様子などについて聞いたところ、「元に戻っただけでなく、大きな挑戦をしようとしたことに自信を持ってくれた」などと回答。不登校から再登校に至る家族の取り組みで、わが子の成長を実感できたという言葉も出ていました。
一方、デジタルとの付き合い方については、再登校を実現した後は遮断するのではなく、上手にコントロールしていく必要性があることを強調。学校に通っている今でも常に不安が付きまとうという苦しい胸の内を語りました。
さらに不登校だった期間は出席率が低下することで今後の進路に影響を与える事実について、不登校を経験した保護者から改めて報告。できるだけ早い時期に解決策を探す重要性を多くの参加者が実感していました。
最後に、参加者から寄せられた質問や意見などを元に、小野教授、小川代表とともに、解決策を探るための議論の場となりました。特に「デジタルとの付き合い方」をはじめ、「暴力的な問題が起こった際の対応法」などについては、専門的な知識に基づいた新たな視点からの方策も提示され、参加者からも納得の表情が伺えました。
今回のシンポジウムの動画や、参加者から寄せられた質問への回答などについては、今後、スダチのYouTubeなどでも公開する予定となっています。
https://www.youtube.com/@futoukou_sudachi
~シンポジウムで参加者から寄せられた主な質問など~
【デジタルとの付き合い方などについて】
◆デジタル制限について、音楽が本人のよりどころになっています。CDを買うのは、なかなかさせてあげられないので、Spotifyや YouTube頼りです。音楽のためにデジタルを使用している時間が多くなっています。こちらも制限したほうがよいですか?
◆小6で4月から不登校で引きこもりでした。8月から塾には行けていましたが疲れてしまったのか、また塾にも行かなくなりました。一日中ゲームYouTubeです。YouTubeやゲームをしないと暴れて手がつけられず、家を壊したりします。引きこもりなので病院も行けません。
◆主人が海外単身赴任中です。私(母)はシフト勤務の仕事をしています。デジタル管理が難しく限界を感じます。また中学生男子なので母だけで管理しきれるのか、暴れた場合も不安です。
◆小学校5年の12月から不登校になり、現在中学1年になりますが、五月雨登校で二学期は1度も登校してません。(1)デジタル依存が要因かと思いますが、毎日無気力状態です。このような子にはどのように接したら良いか(2)小学校から今まで1人で学校に行けず、親が送り迎えをしてます。1人で通わすにはどうしたら良いか
◆ゲーム、SNSを規制した際、子供からの反発に毅然とした態度を取るというお話がありましたが、具体的に教えて頂ければと思います。
◆不登校一年です。デジタルの制限は何度となく試みましたが、「学校にいけてないから、友達との通信ツールとしてデジタルがないと!」というのが子供の言い分です。友達との関係は大切と思うとなかなか完全な制限に踏み切れません。
◆デジタルから遠ざけるために、子どもとの話し合いをする中で、どのように話しを進めていけばいいのかご教示ください。
◆デジタルゼロについて。今から制限をする場合、デジタルの弊害ややることをやっていないことを説得しても子供が納得して受け入れられる自信がありません。強制的にでも取り入れる具体的な取り組み、接し方をおしえてください。また兄弟がある場合、不登校児と親とのやりとりを見せないほうがよいのでしょうか。
◆デジタル制限をかけていくにあたって、本人とどのようにコミュニケーションするのがいいか。利用時間の制限はかけているが、それ以上の対応を求めるときの話し方。
◆YouTuberになりたい、プロゲーマーになりたい、だからゲーム時間増やしてほしい、と言います。夢を応援した方がいいのかという気持ちと、不登校の改善を優先したい気持ちとあり、子どもの夢を否定することなくデジタル制限する声掛けなどありますでしょうか。
◆小4男子、一年半以上完全不登校。昼夜逆転はしていないが、日中はゲームばかりの生活。ゲームに逃げ込んでいるから今は無理に取り上げない方が良いとアドバイスを受けて見守っている。必要な際に制限しようとすると暴れる状態なのですが、暴れた場合にどう対応するのが正しいのか知りたいです。
◆デジタル依存で困っています。ひどい時は、昼過ぎまで寝ています。スマホやゲームを制限する時、本人の反発を出来るだけ少なくするいい方法は、ありますか。また、反発が出た時の上手な対処法はありますか。
【父母の役割などについて】
◆子供に毅然と対応せずに、ほったらかしにする妻へどのように接すればいいでしょうか?
◆一見、父親と関係が悪いようには見えませんが、本人は急に父親が怒るなどの理不尽さが嫌いでしょうがないようで、面倒くさくなるのが嫌で父親の前で学校の話しをされるのを嫌がります。そのような家庭は多いと思いますが、どのように支援を進めていますでしょうか。
◆妻(主婦)が、非協力的で精神的に参っている。娘とコミュニケーションをとって、マインドセットをしても妻の言動ですべて台無しになる。本人は自分には原因がないと思っている。これ以上、仕事の調整をできないので会社を辞めようと考えている。どうしたらいいだろうか。
◆(再登校を実現した)御三方にご質問です。再登校に向けて家族のサポートが重要との話でしたが、父親にはどういう役割や協力をしてもらいましたか?また、もっとこうして欲しかったみたいなことがあればご教授ください。
◆父母の役割として、特に母親がするべき事、父親がするべき事というのは、有りますか?
【登校することの意義の伝え方、言葉のかけ方について】
◆登校するといいことがあるよ、と伝えていくべきなのは理解できます。しかしながら本人にとって学校はいいことは起きない場所なので、ささらない。動く動機にならない。良い伝え方はありますか。
◆中1の娘とのマインドセットで高校に行きたいと思うようになっていて、徐々に教室に戻りたいと。学校とは授業見学を通じて少しずつ戻るための準備を進めているが、最近気持ちが揺らいできている。どのような言葉掛けをするといいか教えてほしい。
◆マインドセットの言葉かけについて教えてください。ポジティブな言葉に変換する、ということでしょうか?
◆子供を褒めると伺いましたが、褒め所が見つからないときはどうすれば良いでしょうか?
【いじめについて】
◆いじめが原因で登校出来ません。思い出して恐怖がひどく本人には聞けない状況で、日々ゲーム、YouTubeで不安をまぎらわします。具体的にアドバイスがあればお願いします
◆いじめが背景にあった場合、登校に向けて、親ができること、学校ができること、本人ができることは何か聞きたいです。
【スクールカウンセラーについて】
◆スクールカウンセラーが多い学校が増えましたが、メリットとデメリットが有れば、教えてください。
【学力問題などについて】
◆私立中学に入り4月から2日ほど行って不登校になりました。これだけ休んだら勉強についていけないのが不安なようですが、一切勉強しようとはしません。通信講座をやりたいと言ったのでやりました。ですが結局やらず、毎日スマホをみてるだけです。声をかけても、ダルいしかいいません。どんな声かけがいいでしょうか
◆私立中高一貫校に通学していますが、私立ならではの対応方法はありますでしょうか。進級進学不可の問題が出てきますので、早めにそのような現実問題を子供に提示したほうがよいのでしょうか。
◆親御さんのお話の中で1月末から再登校したとおっしゃっていました。3学期となると今年度のクラスの中で既に居場所が無い時期でありまた季節的にも最も寒く大人でも朝起きるのが辛い時期になってくるので、今から冬の再登校を目指すとハードルが上がるのではと感じてしまうのですが季節などは関係無く1日も早く対策をすべきでしょうか?
◆小4男の子です。年始に感染症に5回連続で罹ってから、学校と塾に行かなくなりました。中学受験も考えているのですが、学校と塾、どちらを最初に再登校を目指せば良いのでしょうか。
◆小6から行き渋り、現在中1で不登校。授業についていけないのも、不登校の要因の1つです。というのもイベント(体育祭や学園祭等)は、参加します。勉強は親が教えるのも塾も家庭教師も拒否します。勉強は大切なものだと分かっているが、勉強するのがとにかく嫌だそうです。アドバイスお願いします。
~登壇者紹介~
明治学院大学心理学部教授 小野昌彦
明治学院大学心理学部教授、国立宮崎大学名誉教授。公認心理師、専門行動療法士。行動療法の立場から不登校、発達障害、問題行動の解決支援を専門とする。これまで学術的にも評価が高く再登校実績のある包括的支援アプローチにより、不登校ゼロ学校の達成、市単位の不登校半減を達成。平成28年度筑波大学心理・発達教育相談室功労賞を受賞。
株式会社スダチ代表取締役 小川涼太郎
1994年生まれ(現29歳)、徳島県出身。2019年株式会社スダチを設立。「誰もが巣立ちゆける世界を」をミッションに掲げ、不登校支援事業を開始。教育を通して“巣から飛び立つ鳥のように、誰もが社会という大空へ羽ばたけるように”と完全オンラインの支援で子どもたちの再登校を促す「不登校支援サービス スダチ」を展開している。サービス開始から2023年9月までに、累計再登校人数は600名を突破し、これまでに支援を受けた子どもの90.7%が再登校を達成した。株式会社スダチHP:https://sudachi.support/corp/
不登校を経験された保護者の方々
お子様の学年性別:小4女子
不登校のきっかけ:お母様が新型コロナウィルスに罹患され、濃厚接触者として学校を休んだこと
不登校期間:2か月半
再登校までの日数:22日(12/20の冬休み直前(23日の終業式は行けた)〜年明けに再登校)
再登校までのエピソード:小3の頃から行き渋りがあり、4年になって月1程度休むようになっていた。そこでお母様がコロナに罹患され、濃厚接触者として長く学校を休んだのをきっかけに「行きたくない」と言いだした。とても優秀で学級委員もしていたがクラスが荒れ気味で、先生も「疲れたのかもしれない」と言っていたそう。
その後、再登校のサポートを受講し、生活はすぐに整ったが、なかなか再登校の兆しが見えなかった。しかし、お母様が体調を崩したことで、お父様にも深く関わってもらい、家族が結束した結果、再登校することができた。
お子様の学年性別:中2女子(当時小6だった妹さんも不登校になった)
不登校のきっかけ:友達とのトラブル
不登校期間:2ヶ月間
再登校までの日数:約1ヶ月
再登校までのエピソード:妹さんからも「お母さんパシリじゃん!」と言われてしまうほど下手に出ていた。
そこから再登校のサポートを受講し、接し方を徹底して見直していただいた結果、再登校できた。ルールスタートから7日で再登校したが、1週間継続登校した後また休み始めてしまったため、サポートを15日延長。
お子様の学年性別:中3男子
不登校のきっかけ:不明
不登校期間:1年ほど五月雨登校
再登校までの日数:3日目で再登校
再登校までのエピソード:スクールカウンセラー、精神科医、ネットや本で調べた方法、あらゆることを試したが登校できず。
全寮制の高校へ進学することを決めていた中で、最後の手段として再登校のサポートを受ける。無事3日で再登校することができた。