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投稿者:

ZYAO22編集部

再侵入を許さない!沖縄県久米島におけるアリモドキゾウムシの迅速な根絶事例

2026年1月30日
岐阜大学

再侵入を許さない!沖縄県久米島におけるアリモドキゾウムシの迅速な根絶事例

 

 

本研究のポイント

・ 2012年に根絶した久米島のアリモドキゾウムシが2021年に再侵入した事例について、検出から再根絶までの過程と、迅速な防除対応の有効性を検証しました。

・ 過去の国内侵入事例との比較解析から、本事例はこれまでにない短期間での根絶が達成され、防除効率が極めて高いことを示しました。

・ 本成果は、国内外における侵入害虫の早期警戒・迅速対応(EDRR)体制の構築に貢献し、将来的な農業被害および防除コストの低減に資するものです。

・ アリモドキゾウムシの侵入は、もはや南西諸島だけの問題ではなく、今回の成果は、日本本土のサツマイモ産地にとっても“次は自分たちかもしれない”という現実的な警鐘となります。

 

 

研究概要

 岐阜大学応用生物科学部の日室千尋 准教授、沖縄県病害虫防除技術センターの清水優子主任研究員(当時)らの研究グループは、2012年に世界で初めて不妊虫放飼法(注1)によって根絶されたアリモドキゾウムシ(注2:写真)が、2021年に沖縄県久米島へ再侵入した事例について報告しました。本研究では、検出から再根絶に至るプロセスを詳述するとともに、迅速な初動防除が防疫上極めて有効であることを科学的に明らかにしたものです。

 本研究成果は、日本時間2026年1月29日にApplied Entomology and Zoology誌のオンライン版で発表されました。

 

 

 

研究背景

 サツマイモの農業・流通に致命的な被害をもたらすアリモドキゾウムシは、もはや「南西諸島だけの問題」ではなくなっています。 もともと南西諸島を中心に分布し、厳格な防疫体制が敷かれていた本種ですが、2022年10月には静岡県浜松市の沿岸部で本州初の侵入が確認され、緊急防除によって2024年11月末に根絶が達成されました。この事例は、本州のサツマイモ産地にとっても本種が現実的な脅威であることを物語っており、引き続き高い警戒が必要です。 沖縄県久米島では、2012年に本種の根絶に成功して以降(注3)、性フェロモントラップ(注4)と寄主植物調査による継続的な監視が行われてきましたが、2021年8月、根絶後初めてとなるアリモドキゾウムシ雄成虫1個体が性フェロモントラップで捕獲されました。

 

 

研究成果

 本研究では、この再侵入事例に対して実施された一連の調査と防除対応を詳細に分析しました。侵入が確認されると、直ちに補助トラップを増設し、発生源の特定を試みました。その結果、特定のサツマイモ畑周辺で成虫が繰り返し捕獲されましたが、サツマイモや野生寄主植物からは幼虫や成虫は確認されませんでした。

 侵入個体の拡散を防ぐため、発生源と推定された圃場ではサツマイモを完全に除去するとともに、周辺約100ヘクタールの範囲で不妊虫放飼法を実施しました。これは、対象となる害虫を大量に増殖し、放射線等で不妊化し野外へ放すことで野生虫同士の交尾を妨げ、繁殖を阻害、害虫密度を抑制し、やがて根絶に至らせる害虫管理法の1つで、環境負荷の少ない防除技術です。本事例では、約200日間にわたり、累計約300万頭の不妊虫が放飼されました。

 その結果、最後に成虫が捕獲されて以降、アリモドキゾウムシは2世代分に相当する期間にわたり一切検出されず、本侵入個体群は再び根絶されたと判断されました。過去の国内侵入事例と比較すると、本事例は防除面積に対して極めて短期間で根絶が達成されており、早期発見と迅速な対応の有効性が明確に示されました(図1)。

 

図1:過去のアリモドキゾウムシ国内侵入事例と本研究における防除面積と根絶達成までの期間の関係。グレーゾーンは95%信頼区域を表す。

 

 また、本研究から、侵入初期・低密度段階では寄主植物調査のみでは発見が困難であり、性フェロモントラップによる常時監視が極めて重要であることも明らかになりました。

 

 

今後の展開

 本成果は、侵入害虫対策における「早期警戒・迅速対応(EDRR)」の実践例として、今後、日本国内のみならず、海外における侵入害虫管理や持続的農業の推進に貢献することが期待されます。

 

 

研究者コメント

 アリモドキゾウムシは、もはや南西諸島だけの問題ではありません。今回の成果は、日本本土のサツマイモ産地にとっても“次は自分たちかもしれない”という現実的な警鐘です。

 根絶後も監視を続けてきたからこそ、たった1個体の侵入を見逃さずに済みました。地道な監視の積み重ねが、島の農業を守ったと考えています。

 

 

用語解説

注1:不妊虫放飼法

 害虫管理方法の1つ。対象害虫を大量に増殖し、放射線等で不妊化し野外へ放すことで野生虫同士の交尾を妨げ、繁殖を阻害、害虫密度を抑制し、やがて根絶に至らせる手段である。この方法によって、日本では1993年に琉球列島でウリミバエBactrocera cucurbitae、2012年に沖縄県久米島、2020年に津堅島でアリモドキゾウムシ Cylas formicuriusの根絶が達成された(Himuro et al. 2022, Ikegawa et al. 2022)。アリモドキゾウムシの根絶事例は世界初であり、農薬などと違って環境負荷が少ない害虫管理法として世界で注目されている。

 

注2:アリモドキゾウムシ Cylas formicurius

 体長約6mmのゾウムシの1種。熱帯、亜熱帯地域に広く分布するサツマイモの重要な世界的害虫。日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている。日本国内ではトカラ列島以南の南西諸島、及び小笠原諸島に分布する。食害されたサツマイモは有害物質イポメアマロンを産出するため、人畜にとって有害となり、その経済的損失は、世界中で年間100万ドル以上と言われている。この害虫が存在する地域からのサツマイモの移動は厳しく制限されるため、輸出入や流通面でも大きな損失が生じる。2022年10月には静岡県浜松市の沿岸部で本州初の侵入が確認され、サツマイモの農業・流通に致命的な被害をもたらすアリモドキゾウムシは、もはや「南西諸島だけの問題」ではなくなっている。

 

注3:過去のプレスリリース「世界初!不妊虫放飼法を用いた甲虫類の根絶事例 ~沖縄県久米島における19年間の侵略的外来種アリモドキゾウムシ根絶プロセス~」

(琉球大学プレスリリース2022年5月19日)

https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/34406/

 

注4:性フェロモントラップ

 メスの性フェロモンを人工合成した剤でオスのみを誘引・捕獲する装置。 主に発生状況のモニタリングや大量捕獲に用いられ、国内では特に沖縄などの根絶事業や侵入監視に活用されている。

 

 

論文情報

雑誌名: Applied Entomology and Zoology

論文タイトル: Successful control in the first recapture of the sweet potato weevil Cylas formicarius (Coleoptera: Brentidae) since its eradication from Kume Island, Japan 

アリモドキゾウムシ根絶後の久米島で初となる再侵入と、迅速な防除による再根絶成功事例

著者:Yuko Shimizu*, Dai Haraguchi, Yoshifumi Awaguni, Chihiro Himuro*

清水優子*、原口大、粟国佳史、日室千尋*

DOI: 10.1007/s13355-026-00959-7