エプコリタマブの新データが治療困難な再発又は難治性の濾胞性リンパ腫での、強力かつ持続的な奏効を示す
2023年12月26日
アッヴィ合同会社
二重特異性抗体エプコリタマブ(DuoBody(R) CD3xCD20)の新たなデータが治療困難な再発又は難治性(R/R)の濾胞性リンパ腫(FL)患者さんにおいて、強力かつ持続的な奏効を示す
ー 第I/II相EPCORE™ NHL-1臨床試験から得られたデータは、エプコリタマブの治療を受けた患者さんに、82%の全奏効率(ORR)および63%の完全奏効(CR)率がみられたことを示し、第65回米国血液学会(ASH)総会で発表
ー 濾胞性リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の中で2番目に多い病型
イリノイ州ノースシカゴ、2023年12月9日(米国時間)-アッヴィ(NYSE:ABBV)とジェンマブ社(Nasdaq:GMAB)は本日、2つ以上の前治療を受けた再発又は難治性(R/R)の濾胞性リンパ腫(FL)の成人患者さんが、開発中の皮下投与によるT細胞誘導二重特異性抗体であるエプコリタマブ(DuoBody(R) CD3xCD20)による治療を受けた場合に、強力かつ持続的な奏効がみられ、高い全奏効率(ORR)および完全奏効(CR)率が示されたことを発表しました。本試験において、奏効が認められた患者さんの半数以上は、データ解析時点でも奏効が持続していました(すなわち、奏効期間の中央値に到達しませんでした)。第I/II相EPCORE™ NHL-1臨床試験の用量拡大コホートから得られたデータは、12月9日(土) 午後5時30分(太平洋時間)、カリフォルニア州サンディエゴで開催されたASH総会のポスター発表で報告されます。本試験から得られた最新データには、最適化されたステップアップ用量スケジュールが含まれており、免疫介在性のがん治療の特徴的な副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)の発生率と重症度の減少が示されました。
パリ大学・パリ公立病院連合(APHP)サン・ルイ 病院 血液腫瘍科部長(head of the hemato-oncology department, Paris University, Hôpital Saint-Louis Assistance-Publique-Hopitaux de Paris (APHP) in Paris)であるCatherine Thieblemont, M.D., Ph.D.は次のように述べています。「不幸にも病勢進行した濾胞性リンパ腫の患者さんに対する治療は進歩していますが、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫の治療は、特に3次以降の治療において、依然として非常に困難です。本試験の患者さんは、これまで治療が困難であった患者集団です。本日発表されたデータは、この開発中の濾胞性リンパ腫治療薬の高い全奏効率と完全奏効率を実証し、代替治療の選択肢としての可能性を予感させるものであるため、特に注目されます」
アッヴィのvice president, therapeutic area head for hematologyであるMariana Cota Stirner, M.D., Ph.D.は、次のように述べています。「濾胞性リンパ腫を含むB細胞悪性腫瘍のより多くの患者さんを治療するため、中核となりうる治療法の1つとして、エプコリタマブの開発を進めることが、私たちのパートナー企業であるジェンマブ社と共に目指す重要な目標となっています。今年のASHで発表されたこれらのデータは、エプコリタマブによる治療の可能性と、患者さんの早期治療に向けた治療薬開発に対する私たちの自信をさらに高めるものといえます」
128名の成人患者さんからなるこのコホートから得られた結果では、以下が示されました。
・追跡期間中央値17.4カ月において、本試験の主要評価項目であるORR は82%、CR率は63%、奏効までの期間中央値は1.4カ月、CRまでの期間中央値は1.5カ月でした。
・前治療に不応であった(リツキシマブとアルキル化剤の両剤に不応(70%)、または直前の治療に不応(69%))など特定された高リスクグループのサブグループ解析では、ORRとCR率は、全解析対象集団と概ね一致していました。
・奏効期間およびCR期間の中央値は未到達でした。
・CRを経験した患者さんのうち、推定で85%と74%は、それぞれ12カ月と18カ月の時点でも奏効を維持していました。
・追加の試験データは、こちら(要旨#1655)から入手できます。
新たな安全性シグナルは検出されませんでした。高頻度に治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)はCRSであり、67%に発生しました(グレード1が40%、グレード2が25%、グレード3が2%)。CRSのリスクと重症度を軽減するために、個別コホートに対して、最適化されたステップアップ用量レジメンを実施したところ、50名の患者さんのうち24名(48%)にグレード1~2のCRSが認められました(グレード1が40%、グレード2が8%、グレード3が0%)。さらに、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)も報告されませんでした。このデータは、検証中である外来患者さんへの最適化されたステップアップ用量を裏付ける可能性があります。比較的高い頻度(20%超)でみられたその他のTEAEは、注射部位反応(57%)、新型コロナウイルス感染症(40%)、疲労(30%)、好中球減少(29%)、下痢(27%)および発熱(25%)でした。治療中止に至ったTEAEは患者さんの19%で生じており、TEAEに関連した死亡が13名の患者さん(10%)で確認されました。
最近、アッヴィとジェンマブ社は、米国食品医薬品局(FDA)から、2つ以上の治療を受けたR/R FL成人患者さんに対する治療薬として、エプコリタマブを画期的治療薬(BTD)とする指定を受けたことを発表しました。さらに、欧州医薬品庁(EMA)は、同じ適応に関するエプコリタマブのタイプII申請を認証しました。承認された場合、R/R FLは、エプコリタマブに関して、欧州連合において条件付きで承認された2番目の適応となると思われます。詳細はこちらをご覧ください。
第I/II相EPCORE™ NHL-1臨床試験について
EPCORE™ NHL-1臨床試験は、エプコリタマブの安全性評価および予備的な有効性評価を目的とした非盲検、多施設共同試験であり、第I相ヒト初回投与用量漸増パート、第IIa相拡大パートおよび第IIa相用量最適化パートの3つのパートから構成されています。濾胞性リンパ腫(FL)を含む再発、進行又は難治性のCD20陽性成熟B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者さんを対象にエプコリタマブ皮下投与を評価しました。第IIa相拡大パートでは患者さんを新たに組み入れ、治療選択肢が限られている各種タイプの再発又は難治性(R/R)のB細胞NHL患者さんからなる3つのコホートを設定し、エプコリタマブの安全性および有効性をさらに評価しました。用量最適化パートでは、代替的ステップアップ投与レジメンが、グレード2のCRSの発生をさらに抑制し、グレード3以上のCRSのリスクを低減させる可能性を評価しています。BTDの申請には、この患者コホートから得られた追加データが含まれていました。拡大パートでは、独立審査委員会判定による全奏効率を主要評価項目、Lugano基準に基づく奏効期間、完全奏効率、完全奏効期間、無増悪生存期間、奏効までの期間などを副次有効性評価項目としました。全生存期間、次治療までの期間および微小残存病変陰性率は、副次有効性評価項目として評価しました。
濾胞性リンパ腫(FL)について
濾胞性リンパ腫(FL)はBリンパ球から発生する非ホジキンリンパ腫(NHL)の1つで、通常、低悪性度(又は進行が緩徐)です1。FLはNHL全体で2番目に多い一般的な病型であり、NHLの全症例の20~30%、欧米におけるリンパ腫の全症例の10~20%を占めています1,2,3。FLは低悪性度(又は進行が緩徐な)リンパ腫と考えられていますが、既存治療では未だ治癒不能な疾患であり続けており4,5、寛解に至った患者さんの多くが再発を経験します6。
エプコリタマブについて
エプコリタマブは、ジェンマブ社の独自技術DuoBody(R)を用いて創製されたIgG1二重特異性抗体であり、皮下投与されます。ジェンマブ社のDuoBody-CD3技術は、細胞傷害性T細胞に選択的に作用し、標的細胞に対する免疫反応を誘導する技術です。エプコリタマブは、T細胞上のCD3とB細胞上のCD20に同時に結合するよう設計されており、T細胞によるCD20陽性細胞傷害を誘導します7。
エプコリタマブ(米国では製品名EPKINLY(R)で承認、欧州連合では製品名TEPKINKY(R)で承認)は、全世界的に、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含む特定の種類の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の成人患者さんに関して、規制当局による承認を取得しました。EPKINLYは、奏効率および奏効の持続性に基づき、FDAの迅速承認プログラムのもとで承認されました。この適応に対する承認の継続には、検証試験において臨床的有用性を検証、説明することが条件となります。FLにおけるエプコリタマブの使用は、米国およびEUにおいて承認されていません。アッヴィは、国際市場において、今後もエプコリタマブに関する規制当局への申請を継続していきます。
ジェンマブ社とアッヴィは、血液悪性腫瘍の複数の治療ラインにおいて、エプコリタマブの単剤および併用療法としての評価を継続しています。これには、R/R DLBCL患者さんを対象に医師が選択した化学療法と比較したエプコリタマブ単剤療法を評価する第III相非盲検無作為化試験(NCT:04628494)、新たにDLBCLと診断された成人患者さんを対象にエプコリタマブとR-CHOPの併用療法を評価する第III相試験(NCT:05578976)、R/R FL患者さんを対象にエプコリタマブとリツキシマブ+レナリドミド(R2)の併用療法を評価する第III相試験(NCT:05409066)が含まれます。エプコリタマブは、新たにDLBCLと診断された患者さん又はFL患者さんに対する治療薬としては承認されていません。評価中のこれらの適応に対するエプコリタマブの安全性および有効性は確立されていません。詳細はclinicaltrials.govをご覧ください。
がん分野におけるアッヴィについて
アッヴィでは、複数の血液がんの標準治療の変革に取り組むとともに、多様ながん種に対する治験薬の開発を積極的に推進しています。献身的で経験豊富な当社のチームは、革新的なパートナーと協力し、画期的新薬となり得る製品の開発促進に努めています。当社は、世界で最も罹患者が多く、また最も消耗性が高いがん種に対し、20種類を超える治験薬を300件超の臨床試験で評価しています。当社の事業の目的は、人々の人生を豊かにすることです。そのため、患者さんが当社のがん治療薬にアクセスすることができるよう、ソリューションの探求にも取り組んでいます。詳細については、http://www.abbvie.com/oncologyをご覧ください。
アッヴィについて
アッヴィのミッションは現在の深刻な健康課題を解決する革新的な医薬品の創製とソリューションの提供、そして未来に向けて医療上の困難な課題に挑むことです。一人ひとりの人生を豊かなものにするため次の主要領域に取り組んでいます。免疫疾患、がん、精神・神経疾患、アイケア、さらに美容医療関連のアラガン・エステティックスポートフォリオの製品・サービスです。アッヴィの詳細については、www.abbvie.com をご覧ください。LinkedIn、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)やYouTubeでも情報を公開しています。
References:
1.Lymphoma Research Foundation official website. https://lymphoma.org/aboutlymphoma/nhl/fl/. Accessed November 2023.
2.Ma S. Risk factors of follicular lymphoma. Expert Opin Med Diagn. 2012;6:323-33. doi: 10.1517/17530059.2012.686996.
3.Luminari S, Bellei M, Biasoli I, Federico M. Follicular lymphoma-treatment and prognostic factors. Rev Bras Hematol Hemoter. 2012;34:54-9. doi: 10.5581/1516-8484.20120015.
4.Link BK, et al. Second-Line and Subsequent Therapy and Outcomes for Follicular Lymphoma in the United States: Data From the Observational National LymphoCare Study. Br J Haematol 2019;184(4):660-663.
5.Ren J, et al. Economic Burden and Treatment Patterns for Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma and Follicular Lymphoma in the USA. J Comp Eff Res 2019;8(6):393-402.
6.Lymphoma Research Foundation official website. https://lymphoma.org/understanding lymphoma/aboutlymphoma/nhl/follicular-lymphoma/relapsedfl/. Accessed November 2023.
7.Engelberts PJ, Hiemstra IH, de Jong B, et al. DuoBody-CD3xCD20 induces potent T-cell-mediated killing of malignant B cells in preclinical models and provides opportunities for subcutaneous dosing. EBioMedicine. 2020;52:102625. DOI: 10.1016/j.ebiom.2019.102625.